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【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ

「くふ、くふふふゥ……」


 薄気味の悪い笑い声は、意図せぬところから空気が漏れるため、のよう。にっ、と開かれた唇。口の中――前歯の何本かが、無かった。


「あ、あんた……」

「なァに?」

「アハハ――頭が可笑しいんじゃないの。そんなボロボロの姿をした”野良猫”を雇うお店なんて、この街には一軒だってないんだから」

「当たり!」


 小ばかにして言ったホステスの女に向かって、咲花はびっと左手で指さして言う。


「そう――私は退屈な”飼い猫”をやめたの。だから今は気ままな”野良猫”。そして、この姿はそのための代償であって――ささやかなハンデでもあるの」

「は? なに言ってんのよ。ハンデ……?」

「うん、そうだよ。それに、姿かたちなんて後でどうにでもできるから、さァ」

 咲花は事も無げにそう言って身体を反対側に向き直ると、今度は男の方を向いた。

 そして――


「ねえ、おじさん――今夜は特別に、私が遊んであげてもいいんだよ」

「な、なに……?」

「くふゥ――今宵から始まる私の新しい伝説の記念に、ねェ?」

「……」


 思わぬ提案に、咲花を見やったまま唖然と立ち尽くす男。

 それに成り代り大きないら立ちを募らせていたのは、夜の獲物を横取りされそうなホステスの女だった。

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