この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【Onlooker】~サラが見たもの~
第12章 エピローグ
「くふ、くふふふゥ……」
薄気味の悪い笑い声は、意図せぬところから空気が漏れるため、のよう。にっ、と開かれた唇。口の中――前歯の何本かが、無かった。
「あ、あんた……」
「なァに?」
「アハハ――頭が可笑しいんじゃないの。そんなボロボロの姿をした”野良猫”を雇うお店なんて、この街には一軒だってないんだから」
「当たり!」
小ばかにして言ったホステスの女に向かって、咲花はびっと左手で指さして言う。
「そう――私は退屈な”飼い猫”をやめたの。だから今は気ままな”野良猫”。そして、この姿はそのための代償であって――ささやかなハンデでもあるの」
「は? なに言ってんのよ。ハンデ……?」
「うん、そうだよ。それに、姿かたちなんて後でどうにでもできるから、さァ」
咲花は事も無げにそう言って身体を反対側に向き直ると、今度は男の方を向いた。
そして――
「ねえ、おじさん――今夜は特別に、私が遊んであげてもいいんだよ」
「な、なに……?」
「くふゥ――今宵から始まる私の新しい伝説の記念に、ねェ?」
「……」
思わぬ提案に、咲花を見やったまま唖然と立ち尽くす男。
それに成り代り大きないら立ちを募らせていたのは、夜の獲物を横取りされそうなホステスの女だった。