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【Onlooker】~サラが見たもの~
第2章 ラブリーな、彼女?
仕事に向かう、ベンツの車中――。
「なに、ぼーっとしてんだよ?」
「べ、別に、ぼーっとなんか……」
車を運転する黒木からの問いに、サラはそう言って顔を背けた。
今日から零子は伴わずに、一人での仕事。当然不安はあったが、この瞬間サラの頭にあったのは、さっき出会ったばかりの――。
「お前――あのイケメンに、惚れたのか?」
まるで頭の中身を見透かされたよう。黒木の言葉に、サラはハッと身構えた。
「な、なにを言ってるんですか。会ったばかりで、誰かも知らない人のことなんて……」
「ふーん……。あ、そうそう、あのイケメンな――」
「え、はい?」
「――今日の客、だったりして」
それを聞いた瞬間、サラの小さな胸が飛び出しそうなくらい、ドキリとした。
その明快な反応を黒木はルームミラーで確認し、「ちっ」と不愉快そうに舌打ち。それから、ボソリと呟いた。
「ま、嘘だけど」
「はあっ?」
「だが、その反応を見た限り――やっぱりって感じだな」
「か、からかったんですか? 酷い!」
「酷くなんかねーよ。社長も言ってただろ? あのイケメンは、現にウチの顧客。それも、お得意様だ。どの道いずれは、そんな時もあるんだろ」
「……」
ホントにあの人も、オンルッカーのお客? だと、すると……。
そう思った時に、サラはふと、まだ名前も知らないあのイケメンさんが裸で美女と絡み合うシーンを思い浮かべてしまう。
そして直ぐに、それを振り払うようにして、髪を靡かせながら頭をブンブンと左右に振る。ほんの少しだけ身体の芯に熱いものを感じ、スカートの裾を押さえ居心地が悪そうに腰を捩った。