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【Onlooker】~サラが見たもの~
第2章 ラブリーな、彼女?

 オンルッカーとしてのサラが求められているのは、クライアントのセックスを見ること、である。それならば当然、クライアントにはセックスをする相手が必要。だのに、訪れた時から、既に感じてしまっていた。

 この部屋にはヤマダ以外、人の気配が感じられない。それがサラの中の違和感だった。

 だから、当然のように、ぎょっとすることになる。それは、初めて『彼女』の姿を見た時に、だ。


 あっ……!


 ベッドの横。アンティーク椅子にひっそりと佇むその姿を目の当たりにし、サラはこの部屋に来る前の、黒木の言葉を思い出していた。


「お前さ。ラブドールって知ってる?」


 知らない――知らなかった。

 それはサラにとって、あまりに耳慣れない言葉であるから。けれど、今、実際にじっと佇む『彼女』の虚ろとも思えるその表情を目の当たりにし、少なからず心に止まる事柄はあった。

 ダッチワイフであるとか、その言い方にしたって別にピンとくるわけでもない。が、それでも、男の人が寂しさを紛らわせる、そんな『お人形』があるらしいことくらい、かろうじて知識の片隅にはあった。

 そして――


「彼女の名は、エリー。僕の愛する人だ」


 ヤマダはその頬をそっと撫で、その美しく儚げな表情を愛でるように、そう告げていたのだ。

 その身に纏うのは、シックな黒を基調としたゴシックロリータのワンピースドレス。『エリー』は、完璧とも思える美女の造形を以って、彩られて見えた。

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