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【Onlooker】~サラが見たもの~
第2章 ラブリーな、彼女?
そんな風に神妙に話すヤマダの表情を窺い、サラは訊いた。
「あの――差支えなければ、その方とは、どのようなご縁で?」
「田舎の母親が地元の婚活パーティ―に、俺に相談もなく申し込んでいたんだ。もちろん気は進まなかったが、母親としても息子の行く末を心配してのことだ。酷く憂鬱だったが、仕方なく参加だけでもすることにした。そしたら――」
ヤマダは何かを想い浮かべるように、宙を見つめる。
「――当然、最初はせいぜい壁の花だった。案の定、こんな気難しく神経質そうな俺に興味を抱く女性など一人もいなかった。それでいて、自分から声をかけられる勇気があるわけでもない。別になにかを期待してたわけでもなかった。そうやって、只ひたすら時間が過ぎるのを待っていたんだ。すると、そんな時だった――」
『どうも、はじめまして』
「――俺にそう声をかけた女性は、ふくよかな丸顔ににっこりと笑顔を浮かべていた。その瞬間に俺は、不思議とほっと安らぐような感情を覚えていたんだ」
「それで、その方とお付き合いを?」
「ああ――といっても、普通の女性とどうやって付き合えばいいのかさえ、わからないような男だ。果たして一般的な意味で、それが付き合ってると言えるかどうか……」
「でも、ヤマダさんは結婚を考えるまでに?」
「まあ、俺にも母親を安心させたいという気持ちはあった。彼女は田舎で両親がやってる農家の手伝いをしてる。今年で三十。さっきも少し触れたように決して美人ではないが、俺の母親にはいたく気に入られているよ」
そう話しながら、ヤマダは隣りに鎮座するエリーの髪を無造作に、そっと撫でた。
「こんな俺だって、孤独を感じなかったわけじゃない。いいや、人一倍そんな寂しさに苛まれていたからこそ……。そんな心を初めて癒してくれているのが、彼女なんだと気づいた。それはエリーでも、決して埋められなかった想いだった。だから……俺は本気で、彼女とのことを考えようと決めたんだ」