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【Onlooker】~サラが見たもの~
第3章 イケナイ、男(ひと)?
「サラちゃん、ちょっといいかしら」
その日の夕刻。事務所に来ていたサラは、零子からそう声をかけられ隣の社長室へ。
改まってなんだろう――と、サラはやや妙に感じた。
そして、その話の向きは――
「今夜のお仕事のことなんだけど」
「はい……」
そう話しを切り出された時点で、やはり変だと思った。
まだ数回ではあるが、これまで行った仕事に関しての連絡は専ら黒木との間で行われ、社長の零子から直接依頼されることはなかったし、そういうものだと思っていた。
しかし、この日に限っては異なる事情があるらしく。
「実は今、二件のお仕事の依頼があるのだけど。そのどちらにサラちゃんに行ってもらうべきか、少し悩んでいたの。それで、サラちゃんに希望を聞いてみようと思ったの」
「はあ……それは、ありがとうございます」
前回の時のような最低と思える現場もあった。もしかしたら黒木からそんな話が通っていて、少し配慮しようということなのか。だとしたら、それは素直に有り難いが。
「片方のクライアントが、どうしてもサラちゃんをって」
「私を? それはやっぱり、私が……処女、だからですか?」
この前、黒木からオンルッカーとしての自分の肩書が『処女』であることを聞いている。それについては不本意であるし、仮にそれを承知で指名してくるのなら、やはり前回と同じような男を思い浮かべてしまう。
「そうではないの。いいえ、まるで無関係とも言えないのだけれど……」
「?」
珍しく言い淀む零子の様子を前に、サラは小首を傾げた。
「ほら、この前エレベーターで会った彼、憶えてる?」
「あ、はい――もちろん」
イケメンさん――サラの脳裏に、パッとその顔が浮かんだ。
すると、次いで――
「あの彼からの指名があったとしたら、サラちゃんはどう感じる?」
零子からそう聞くと、心音がトクンと一際高い音を鳴らした。