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【Onlooker】~サラが見たもの~
第3章 イケナイ、男(ひと)?
あのイケメンさんからの指名。それにまず、ときめいてしまう。
だが、しかししかし――それは同時に、イケメンさんが誰かとセックスをする場面を自分が見るということであって。
そう思えば今の自分のトキメキが、行き先を失ってしまうように感じた。実に複雑な感情が芽生え始めている。
が、それでも――
「どうって……わざわざ私を指名してくださったのなら、それには応えたいと思いますが」
「そう……」
零子はそう頷き、それから『イケメンさん』のことについてサラに話した。
「名前は――紺野涼(こんの りょう)。年齢は三十一歳。職業は舞台演出家よ」
「えっ、三十――?」
てっきり二十代だと思っていたサラは、まずそこに驚く――が。
「――って、社長! クライアントさんの個人情報、私に教えちゃっていいんですか?」
ラブドールのヤマダの時もそうだが、サラが黒木から伝えられたのは仮名と性別と簡単な事情だけであり。今、零子が喋ったような具体性はなかったのだが。
「別に構わないわ。なにしろ彼は既に、かなり顔が売れてるの。若手演出家としての実力もそうだけど、あの風貌でしょ。最近ではメディアにもかなり露出があるわ。だから見る人が見れば一目瞭然ね。サラちゃんは、知らなかったみたいだけど」
「ええ……私ってあまり、芸能とか詳しくなくって」
サラはなんとなく、申し訳なさそうに言う。
「それは構わないけれど。とにかく、口外できないのは他のクライアントと同じ。それは、わかってくれているでしょう?」
「ええ、もちろんです」
相手が著名な人間であれば、その重要性は否応なく高まる。たとえば普通に、週刊誌にだって売れるネタであろう。