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隷吏たちのるつぼ
第2章  第一章 醒めゆく悪夢
 市営住宅課へ配属になった悠香梨がジントニックへ唇を付けつつ、この一ヶ月窓口を訪れた人々を思い出して眉間を寄せた。技術職として道路管理課へ配属になった太一も、うんうんと大袈裟に頷いてみせる。

 智咲は山林地域振興課という部署に配属になった。

 N市は県内第二の都市ではあるが、大合併の折に二つの市と周辺の町村を飲み込んで大きくなっただけだった。相変わらず県庁所在地に人口も産業も集中している。もともと財政が悪化していた周辺自治体がN市を頼る形で合併したため、市政運営はむしろ厳しいものになっていた。
 なのに、市域だけはやたら広くなった。山林地域振興課の拠点は隣接町の役場が名を変えた、市街から遠く離れた分庁である。

「なんか、時代遅れのダサい制服着なきゃならないし」

 しかも智咲の執務場所は、分庁から更に山道を行ったところにある「やまのくらし会館」という、前自治体が何の目論見もなく作ったハコモノ施設だった。アパートからは車で三十分、一ヶ月もあればペーパードライバーから脱却するのに充分な距離があった。山林をテーマとした展示室があるが、三百円払って誰かが訪れているのを見たことがない。時々、会議室なり講堂なりが、自治会の会合や郷土料理サークル、小学校の図画展覧会などに使われているが、とても採算は合っていない。

「おじいちゃん、おばあちゃん、……たまにガキんちょ? 利用者がそんなんだと、オッシャレーな制服よりも、安心感てもんが違うんでしょ。いいじゃん、のどかでいいとこだよ、あのへんって」

 悠香梨が肩をポンと叩いて慰める。すると太一が、あ、とグラスを止めた。

「そういや、あの辺りで特別プロジェクトが立ち上がるって聞いたぜ?」
「特別プロジェクト?」
「県で補正付けて、なんかやるって。ほら、会館の近くの山ん中に廃校になった小学校あったろ? それ利用して何かするらしいぜ。ウチの課で、あそこへ行くための道、広げるだの何だのって話してた」
「へー、何でまた、あんな辺鄙なとこに──、あ」

 いましがた智咲を慰めたばかりなのに、県内出身者にとっても智咲の勤務地は僻地と思っていることがバレてしまって、悠香梨はイタズラっぽく舌を出して手を擦り合わせた。
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