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隷吏たちのるつぼ
第2章  第一章 醒めゆく悪夢



 分庁舎で一人で残業をしていると、ガラス戸がゴン、ゴンと叩かれた。窓口時間はとっくに過ぎている。

「征四郎さん……。どうやって入ったんですか?」

 錠が外され、篭山征四郎はハンチングを取った後ろ頭をボリボリと掻き、

「警備員のジイさんに入れてもらったんだ。土産に何本か渡してやったら、どーぞどーぞ、だったよ」

 と、提げていたビニール袋から取り出した缶ビールの飲み口を開けた。

「困りますよ、ここでは」
「んーだよ、俺と芳賀ちゃんの仲だろぉ? ここで一番エラい芳賀ちゃんが許可してくれんなら、誰も文句言わねえって」

 十歳ちかく年下の征四郎は、いつも芳賀のことを「ちゃん」付けで呼んだ。中学生の頃からだ。注意しても聞き入れないだろうし、注意できる立場ではないからしたことはない。余計な不興を買うだけだ。

 征四郎はビールを含み、芳賀が座っていた雛壇にドッカリと腰を下ろした。画面に表示されていた回議書類を見て失笑する。

「マジメだねぇ。こんなのとっとと終わらせてさ、キャバクラ行こうぜ、キャバ、キャバ」
「いえ、もう少しありますんで……」

 芳賀は斜め後ろに立ち、四十歳間近にもなって周囲の迷惑も顧みず自由気ままに振る舞う征四郎の薄い脳天を眺めた。

 N市発祥の篭山開発は、地元の有力企業だった。戦後の木材需要により成長した会社だが、林業の衰退を早くに読み、住宅販売、不動産斡旋業へと事業を展開して業績を積み上げると、合併によって建築施工業も行うようになり、バブル崩壊後に乱立した公共建築工事では、むしろ財を成した。
 常に時勢を読んだのは二代目たる征四郎の父だった。今は長男へ経営が承継され、英才教育を施された三代目は能力を如何なく発揮し、着々と生産基盤を海外へと移して、成長基調を維持している。

 征四郎は、その名の通り篭山兄弟の四番目だ。父が中年になってから内縁の妻と成した子だが、この地に隠然と力を持つ篭山の血を引く征四郎を、周囲は他の兄弟たちと同様に──表面上は同様に、恭しく扱った。
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