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隷吏たちのるつぼ
第2章  第一章 醒めゆく悪夢
第一章 醒めゆく悪夢





 市名を冠した駅の周辺はそれなりに拓けているから、ただ飲むのならいくらでも店はある。しかしそのほとんどは、廉価な居酒屋チェーン店、ド演歌流れる赤提灯、一見をとても受け入れそうにないスナック、本来は飲みがメインではないラーメン屋、そんなたぐいの店ばかりだった。

 だから智咲たちの入った地下のショットバーは稀少な存在だった。打放しのコンクリート壁は黒に塗りつぶされ、ポスターやペナントが貼りつけられている。ダウンライトは各テーブルのみを照らし、ぶら下ったスピーカーが重低音を響かせていた。

 意匠を頑張っているのは伝わってくるが、学生時代に飲みに行っていた店に比べると全く垢抜けない。一度そう思ってしまうと、集っている人々も同じく垢抜けなく見えてきてしまう。

 この店を選んだのは、悠香梨の部署の先輩職員から、飲むならここがいい、と薦められたからだ。

 とはいえ先輩も、この残念な店の雰囲気を「イケてる」と勘違いして薦めたわけではない。仄闇では共に飲みに来た者の顔しか見えないし、大きめのBGMだから周囲に会話は聞こえない。それが大変都合がいいのだ。

 とにかく飲む時は気をつけろ、──決して役所の職員であることをバラすな。

「なんかさ、こうでもしなきゃ飲めないなんて、私たちってなんなの、って感じしない?」

 頬づえをついた智咲は、チェイサーで氷をつついて愚痴った。

「仕方ないじゃん。私ら市民の皆様がたが納めてくれた税金のおかげで食ってんだもん」

 一緒になって文句を言えば酒が不味くなるので、悠香梨は物わかりの良いことを言った。

 目を惹く華やかな顔立ちが反面鼻っ柱の強そうな印象を持たせる悠香梨よりも、いかにもな育ちの良さがうかがえ、清楚な容姿の智咲のほうが、そういった優等生的な発言が似合うものだが、今は逆になっていた。

「税金を使ってるわけじゃなく、お給料を使ってるんだけど」

 飲んだら絶対に車を運転してはいけませんよ。それから、役所に出入りしている業者と飲みに行ったり、あろうことか奢ってもらったりしてはいけませんよ。そんな当たり前の注意喚起なら納得できなくもない。
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