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私は女優よ!
第6章 見失う心。見えてくる現実
 
 そんな事を言いながら、不倫をして挙句殺人まで犯したのなら、三宅の元から去っていった人間の方が、まだ真っ当な人間だったのかもしれません。
私は肝心な時に選択を間違えるバカなんですよ」


 「人間は間違える生き物です。
私も間違いは犯します。
誰だって間違いは犯します」

 「殺人は犯しませんよね?弁護士さん」

 三宅環はそう言って哀しく笑った。
私は言葉に詰まった。



 大概の人間は殺人を犯す前に留まる。
留まれなかった人間は……境界を超えてしまったのかもしれない。
ほんの一瞬、悪魔に心を奪われ、罪を犯してしまう。
私は沢山の悪人を見てきた。
弁護をするのもうんざりするくらい。
人を殺して自分は何とか罪を逃れる為に平気で嘘をつき、自分を正当化する人間。
そんな人間は、はしたなく歪んだ醜い顔をするのだ。

 私は目の前の三宅環を悪人には思えなかった。

 「三宅を殺してしまった罪からは逃れられません。
永遠に私の心はそれに囚われる。
三宅の人生を私が奪いました。
私は………あの人の命が消える瞬間まで妻だった」
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