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ヒロイン三国ファンタジー
第14章 14 英雄たちの死・1
 政務を終え、一人になっているときふわっと甘い桃の香りを感じ、玄徳は振り向いた。

「ああ、関羽さん! いきなりどうしたのです」

 優しい微笑みを湛え関羽が立っている。

「兄者。もう一度、桃の花を髪に差したあなたが見たかったですな」
「関羽さん……」

 若き日の桃園の誓いを思い出し玄徳はふっと甘い疼きを感じ、俯いてそっと関羽の立派な髭を撫でようとした。
絹のような滑らかさを感じるはずであったのに手ごたえがない。はて、と顔を上げると関羽の姿は消えていた。

「関羽さん?」

 辺りを見まわしていると、諸葛亮が珍しく慌てた様子で兵卒を伴いやってくる。

「我が君! 我が君!」
「ああ、孔明。今しがた関羽が参ったのに、すぐにどこかに行ってしまった。どこであろうか」

「ああ……。我が君……。申し上げるのだ」

 薄汚れ、あちこち傷だらけの兵卒が恐る恐る告げるのは関羽の死だった。

「え?」

 玄徳は真っ暗な闇の中に落ちるようにその場に崩れ落ちた。必死に呼びかける諸葛亮の声を聴きながら。
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