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ヒロイン三国ファンタジー
第14章 14 英雄たちの死・1
呂蒙は悲願の達成を尚香に報告したが、逆に叱咤されてしまう。
「関羽は生け捕りにせよと言っておったろうが」
「し、しかし関羽を倒せばこのまま蜀へ進軍しその地をわがものにできるではありませんか」
「関羽を人質にし、玄徳様を迎えようと思っておったのに」
「そんな……」
「子明よ。お前は公瑾のやり方と思いを受け継ぎ過ぎている。せっかく魯粛がお前を褒めていたのに。魯粛の三国鼎立の目的をちっともわかっておらぬ」
「尚香様……」
「もうよい。下がれ。しばらく養生しておれ」
人生の最大の目的であった大仕事が彼にとって亡き周瑜が果たせなかった荊州奪回であった。
目的を遂行することが出来た達成感と、尚香の叱咤によって、緊張の糸はほぐれ、静かに息を潜めていた病魔がまた呂蒙の身体を侵食始めた。
もう起き上がることが出来ない呂蒙を陸遜伯言が見舞う。
「伯言か。そなただけがよく見舞ってくれるな」
「呂蒙殿のおかげで今の私がありますから」
「なあ伯言。わたしのやり方は間違っていたのだろうか」
「いいえ。私も同じことをしたでしょう」
「そうか……」
「尚香様は女人故、我々とは手段が異なりましょう」
ふうっとため息をつき、青ざめた顔にもう赤みがさすことはない。
「伯言よ、わたしのようになるな。ちゃんと欲するものを得よ」
「呂蒙殿……」
「わたしは知っておる。そなたは尚香様を慕っておるのだろう。今回の褒美でねだるのだ。きっと孫権様はお許しになる」
「それで――呂蒙殿はよろしいのですか? 尚香様を私が賜っても。あなたと尚香様は――」
「知っておったか。わたしはあの方に抱かれながら教わっていただけのことだ。伯言。後は頼む。
そして尚香様に伝えてほしい。わたしは大都督を愛していましたが、我が主はあなたでした、と」
「わかりました」
「良かった。心残りはない。何一つ悔やんでいない。これから公瑾様のもとに向かうのだからな……」
一瞬だけ頬に赤みがさしたように見えたのは陸遜の錯覚であった。
「関羽は生け捕りにせよと言っておったろうが」
「し、しかし関羽を倒せばこのまま蜀へ進軍しその地をわがものにできるではありませんか」
「関羽を人質にし、玄徳様を迎えようと思っておったのに」
「そんな……」
「子明よ。お前は公瑾のやり方と思いを受け継ぎ過ぎている。せっかく魯粛がお前を褒めていたのに。魯粛の三国鼎立の目的をちっともわかっておらぬ」
「尚香様……」
「もうよい。下がれ。しばらく養生しておれ」
人生の最大の目的であった大仕事が彼にとって亡き周瑜が果たせなかった荊州奪回であった。
目的を遂行することが出来た達成感と、尚香の叱咤によって、緊張の糸はほぐれ、静かに息を潜めていた病魔がまた呂蒙の身体を侵食始めた。
もう起き上がることが出来ない呂蒙を陸遜伯言が見舞う。
「伯言か。そなただけがよく見舞ってくれるな」
「呂蒙殿のおかげで今の私がありますから」
「なあ伯言。わたしのやり方は間違っていたのだろうか」
「いいえ。私も同じことをしたでしょう」
「そうか……」
「尚香様は女人故、我々とは手段が異なりましょう」
ふうっとため息をつき、青ざめた顔にもう赤みがさすことはない。
「伯言よ、わたしのようになるな。ちゃんと欲するものを得よ」
「呂蒙殿……」
「わたしは知っておる。そなたは尚香様を慕っておるのだろう。今回の褒美でねだるのだ。きっと孫権様はお許しになる」
「それで――呂蒙殿はよろしいのですか? 尚香様を私が賜っても。あなたと尚香様は――」
「知っておったか。わたしはあの方に抱かれながら教わっていただけのことだ。伯言。後は頼む。
そして尚香様に伝えてほしい。わたしは大都督を愛していましたが、我が主はあなたでした、と」
「わかりました」
「良かった。心残りはない。何一つ悔やんでいない。これから公瑾様のもとに向かうのだからな……」
一瞬だけ頬に赤みがさしたように見えたのは陸遜の錯覚であった。