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ヒロイン三国ファンタジー
第15章 15 英雄たちの死・2
 曹節は綺麗に結い上げた漆黒の髪をばさりとおろし、一つにまとめ上げかんざしを挿す。そして薄い付け髭をつけた。

「ち、父王!」

 彼女は若き日の曹操孟徳にそっくりだ。

「わたしくしはこの姿で陛下と静かにどこか他所で暮らしとうございます」
「まさか、私の代でこのようなことになるとは」

 曹丕は群臣の新王朝建設の期待を一身に寄せられ、跳ね返す心構えは十分にあったが、そろそろ限界を感じている。
せめて献帝の太子を時期皇帝として擁立し、曹丕が政を行えばよいのであるが、献帝は跡継ぎに恵まれてはいなかった。曹操と献帝の子も幼い時に病死している。


 こうして後漢は終焉を迎え、曹丕が皇帝となった魏王朝が始まる。そして献帝が亡き者にされたという誤りの知らせが蜀と呉にも流れた。
曹丕が皇帝の名乗りを上げることを認めることはなく、蜀の劉備玄徳も蜀漢を興し、皇帝を称する。孫権も呉王を名乗り、魏に対する抵抗を見せた。
 こうして三国時代が始まる。



 献帝・劉協は山陽公に封じられ、山陽公夫人となった男装の麗人・曹節と天寿を全うするだろう。魏が滅び晋の時代になっても山陽公は存続を保証されていた。

 曹節は劉協と狭い世界に二人きりで閉じ込められたような今の状況に満足を得る。

「やっと父王、いえ母上からあなた様を手に入れられました。今はわたくしを孟徳とお呼びになっても構いません。いつかはきっと」

 膝で眠る劉協の髪を優しく撫でながら辛抱強く、強い信念でじっと絆を育てているところであった。
結い上げ一つにまとめた髪には曹操から譲り受けた紅玉の金のかんざしが輝いている。
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