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ヒロイン三国ファンタジー
第16章 16 英雄たちの死・3
 最愛の兄弟・関羽を失い、呉への報復を諸葛亮、趙雲に諫められてはいたが、張飛が部下に殺され、その首を呉に持って孫権へ降伏したことで、もう誰にも劉備玄徳、蜀の皇帝を止めることは出来なかった。

 蜀からの大軍は呉への強力な脅威となり、討伐は成功すると思えた。しかし呉の気候による蜀軍の疲弊と疫病、そして陸遜による計略にはまり、まさかの大敗を喫することになる。

 諸葛亮と趙雲により白帝城へと逃げ込み、命だけは失わずに済んだが、わずかな兵と己の愚かさに玄徳はもはや立ち上がる気力が尽きかけた。

「もう……朕には起き上がることは出来ない」
「我が君。お願いです。お気を確かに」

「子龍、そなたの忠言を無視して済まない。しかし関羽や張飛だけではなく、そなたであっても朕は呉の討伐に参ったであろう」
「う、ううぅ、玄徳様……」

「漢王室の復興をこの手で成すことが出来なかった。孔明と共に尽力しておくれ」
「御意っ!」


「子龍、私が死んだら、どうぞ孔明が良いと思う方を妻に娶って跡継ぎを残してください」
「そんなっ、嫌です。あなたと、わたしはあなたとだけ契りを結んでいたいのです」

「これはお願いではなく、朕からの命である」
「……。では、一つお約束してください。来世ではわたしの妻になると……」

「ふふっ、子龍。そうよなあ今度は庶民の娘に生まれ、そなたに嫁ぎ一緒に田畑を耕し……」
「ええ、子を育て、慎ましく頭が白髪になるまでゆっくりと過ごしましょう」


「劉禅を頼みます。今までよく尽くしてくれました。愛しの君」
「う、く、ううぅ、くぅ」

「武人らしく堂々と下がってください。孔明を呼んで……」
「御意っ」

 どんな戦場でも恐れることなく立ち向かってきた趙雲は、初めて失う辛さを知る。愛しい人が去る現実に胸が押しつぶされそうであった。
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