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ヒロイン三国ファンタジー
第16章 16 英雄たちの死・3
 呉の建業では狂ったように孫尚香が泣きわめいていた。

「伯言! よくも! あれほど生け捕りにせよと申しておったのに!」
「申し訳ございません」

 心を得られなくとも玄徳自身を呉にとどめようと考えていたが、その思惑は叶うことがなかった。玄徳の死の知らせは尚香に行き場のない怒り生み、それを陸遜にぶつけるしかできない。

 力が尽きるまで尚香は陸遜にこぶしを振り上げる。陸遜は顔や体が腫れあがろうが、黙って耐え、尚香の心と身体から怒りと共に、玄徳の存在が抜けだされていくのを待った。

 最後の振り上げられた手はもう陸遜に触れることなく空を切り、そして尚香自身もそのまま倒れ込む。

「う、うぅ、玄徳様……」



 今、媚薬でも使い空っぽの身体に快楽を注ぎこめば、彼女は恐らく陸遜の手に堕ちるだろう。
 悲しみを快楽に交換すれば、尚香にとっても楽になれるはずである。


「どうですか? もうここはすっかり私を欲していますよ」

 媚薬は尚香の身体に疼きをもたらし、蜜をしたたらせ、じらせば自ずから陸遜に馬乗りになり腰を振らせる。
 そして涎を垂らし、愛液を垂れ流す。

「あんっ、あ、ん、も、もっとぉ、き、きも、ちっ、ぃっ」

 何度も突き上げ絶頂にいざない、快感の虜にする。しかしその時には陸遜の愛した孫尚香はいない。



「想像だけにしておこう」

 涙も枯れ果てたようで、頬にはその乾いた痕だけがあった。疲れ果て眠った尚香を抱きしめ、辛抱強く陸遜はこちらを振り向くことを待つ。

 物事を性急になそうということと、激昂は目的達成の邪魔になることを、先人のおかげで彼はよく知っていた。
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