この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ヒロイン三国ファンタジー
第23章 23 三国を巡って
劉備の墓を参ろうと、尚香は蜀を目指して漢中から険しい道を進む。長江の雄大な眺めはすでになく、険しい山肌と切り立った岩山が迫る。断崖絶壁に杭を打ち込みなんとか通行できる桟道は風でギシギシときしみ揺れ、下を見れば細いが急な川が流れ、水面の光に目がくらむ。
女丈夫と言われ続けた尚香でさえ、息をのみ恐れを感じるこの場所で一体兵士たちは、どれだけの不安を抱え北伐していたことであろうか。
「まさに天然の要塞……」
色彩も呉とは違い、霞みがかったようにぼんやりとし、空気も湿り気を帯びている。蜀の都、成都につくが民は劉備、諸葛亮を失ったためであろうか、活気なく静かである。
尚香はしばらく町の中を歩き、酒場に入り、亭主に食事と酒を注文した。
「亭主よ、元徳様の墓はどこにあろうか」
「ああ、だんなは参りに来られたんですね。ここから北に向かって歩けばすぐわかります。皆参っておりますから」
「そうか。ありがとう」
男装をして付け髭をした尚香を女人と思うものはいなかった。浅黒い肌に女人しては背が高くがっちりとした体格と、腰に帯びた長剣により絡んでくるものもいない。絡まれたとしても、毎日、剣技を磨いてきた彼女にとって、並の男は相手にならなかった。
女丈夫と言われ続けた尚香でさえ、息をのみ恐れを感じるこの場所で一体兵士たちは、どれだけの不安を抱え北伐していたことであろうか。
「まさに天然の要塞……」
色彩も呉とは違い、霞みがかったようにぼんやりとし、空気も湿り気を帯びている。蜀の都、成都につくが民は劉備、諸葛亮を失ったためであろうか、活気なく静かである。
尚香はしばらく町の中を歩き、酒場に入り、亭主に食事と酒を注文した。
「亭主よ、元徳様の墓はどこにあろうか」
「ああ、だんなは参りに来られたんですね。ここから北に向かって歩けばすぐわかります。皆参っておりますから」
「そうか。ありがとう」
男装をして付け髭をした尚香を女人と思うものはいなかった。浅黒い肌に女人しては背が高くがっちりとした体格と、腰に帯びた長剣により絡んでくるものもいない。絡まれたとしても、毎日、剣技を磨いてきた彼女にとって、並の男は相手にならなかった。