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ヒロイン三国ファンタジー
第24章 24 魏の末路
 早朝、朝廷からの使者が馬を走らせ、屋敷の門を激しく叩き「相国! 相国! 」と大声で喚き散らす。司馬炎は反乱でも起きたのかと、急ぎ、履物を何とか履き表に出た。

「どうした! 何事だ!」
「陛下が、陛下のご様子が!」

「どうした! 」
「ここ3日ほど何もお口になさらず、とうとう臥されてしまったのです。相国と呟いたきり……」

「なんと! すぐに参る」

 司馬炎は最低限の支度を急ぎし、曹奐の元へ馬を走らせる。宦官が青白い顔で寝室に案内し、そしてすぐに立ち去った。

「へ、陛下。こ、れは」

 丸い頬はしぼみ、痩せ、眼窩が窪み青黒い顔は青年と思えない。

「ああ、炎か。よく来てくれたな」
「どうしたのですか。このようなお姿は、先日お会いした時はお元気でしたのに」

「朕は、もう、何もしたくないのだ」
「どうして、どうしてお食事をなされないのですか」

「突然、味がしなくなったのだ」

 精神的にここまで己を追い詰めてしまった曹奐は、元々乏しい欲をさらに減少させ、食事を拒み横たわる。無理やりにでもと医師が羹(スープ)を飲ませようとしたが、嘔吐してしまい、余計に体力を奪ってしまった。

 このままでは曹奐を死なせてしまう。

 司馬炎は力なく笑い、亡き、父、司馬昭、伯父、司馬師、祖父、司馬懿、全ての司馬家の祖先に詫び、曹奐に告げる。

「魏王朝を終わらせましょう。禅譲を望みます」

「え、炎、ありがとう……。そなたはきっと名君になる」

 夭折した弟たちのように彼を失わずに済んだことが、幸いであろうかと司馬炎は放心状態で魏王朝、最後の皇帝、曹奐を見つめ続ける。
 こうして45年間続いた魏王朝は幕を閉じ、司馬炎が新王朝、晋を建てる。
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