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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
魏で司馬懿の死を見届けた後、孫尚香は呉へと戻る。煌びやかな明るい景色は辛い思い出が多くとも足取りを軽くする。
都の建業に何やら新しい建物が立っているのが見え、尚香は近づく。夫の陸遜が死に、ここを立ち去るときにはなかった建物である。
呉は異民族と隣り合わせであることで、文化に多様性がある。また孫家三代、それらを排斥せず受け入れてきたことが、より華やかであか抜けた文化を産んできた。
横長く反り返った屋根と朱色の柱に黄色の壁。蜀の伝統的で幽玄的な奥ゆかしさや魏の迫力と、巧みな技が生きる力強さも見事であったが、やはり生まれた土地のこの軽快な色彩と均衡感覚は呉が随一であるなと尚香は自負する。
門の前を掃除している下人にこの建物は何かと尋ねる。
も
「ああ、これは僧会様の寺院ですよ」
「寺院とな」
「ええ、仏教の」
「なるほど」
全土ではほぼ儒教が幅を利かせ、勿論、呉の文官たちも儒学者が多い。しかし、ここ呉では新しい教えである仏教を受けいれており、30年も前から支謙恭明が仏教典を漢語に訳し、今は亡き太子の孫登の教育係でもあった。
「どうぞここは身分関係なく僧会様のお話を聞けますので」
「ありがとう」
広々とした本堂に入ると、確かに様々な身分のものが康僧会の話しに耳を傾けている。しばらく尚香も末席で聞きながら、生きることと苦しむことについて思いを馳せる。話が終わると、皆は帰っていくが一人少年が、待ってましたとばかりに康僧会に質問攻めにしている。
利発そうな少年は身なりが良く、豪族か、孫権の家臣の息子かもしれない。質問に一つ一つ丁寧に康僧会答えているが、少年は分かったような分からぬような複雑な表情をしたのち、質問が尽きたのか立ち去った。
尚香はその少年の瞳に兄、孫権と同じ碧さを認め、にこやかな康僧会に挨拶がてら彼の事を尋ねることにした。
都の建業に何やら新しい建物が立っているのが見え、尚香は近づく。夫の陸遜が死に、ここを立ち去るときにはなかった建物である。
呉は異民族と隣り合わせであることで、文化に多様性がある。また孫家三代、それらを排斥せず受け入れてきたことが、より華やかであか抜けた文化を産んできた。
横長く反り返った屋根と朱色の柱に黄色の壁。蜀の伝統的で幽玄的な奥ゆかしさや魏の迫力と、巧みな技が生きる力強さも見事であったが、やはり生まれた土地のこの軽快な色彩と均衡感覚は呉が随一であるなと尚香は自負する。
門の前を掃除している下人にこの建物は何かと尋ねる。
も
「ああ、これは僧会様の寺院ですよ」
「寺院とな」
「ええ、仏教の」
「なるほど」
全土ではほぼ儒教が幅を利かせ、勿論、呉の文官たちも儒学者が多い。しかし、ここ呉では新しい教えである仏教を受けいれており、30年も前から支謙恭明が仏教典を漢語に訳し、今は亡き太子の孫登の教育係でもあった。
「どうぞここは身分関係なく僧会様のお話を聞けますので」
「ありがとう」
広々とした本堂に入ると、確かに様々な身分のものが康僧会の話しに耳を傾けている。しばらく尚香も末席で聞きながら、生きることと苦しむことについて思いを馳せる。話が終わると、皆は帰っていくが一人少年が、待ってましたとばかりに康僧会に質問攻めにしている。
利発そうな少年は身なりが良く、豪族か、孫権の家臣の息子かもしれない。質問に一つ一つ丁寧に康僧会答えているが、少年は分かったような分からぬような複雑な表情をしたのち、質問が尽きたのか立ち去った。
尚香はその少年の瞳に兄、孫権と同じ碧さを認め、にこやかな康僧会に挨拶がてら彼の事を尋ねることにした。