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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
 次期皇帝に孫権の末子である孫亮がたてられた。幼い孫亮の補佐をし、教え導く師である太子太傅に諸葛恪が任命される。これにより呉の実権は諸葛恪が握ったも同然であった。
孫権の死後すぐに魏が南下し攻めてきたがこれを諸葛恪は撃破する。ますます自分の時代が来たと有頂天になり魏を追撃したが大敗を喫する。
この失敗と専横により、孫家の一族である孫峻に抹殺されることになる。また諸葛恪のみならず、彼の弟、諸葛融の一族まで皆殺しとなった。

 柴桑で赴任中であった陸抗はこの政変に巻き込まれることはなかったが、屋敷に戻ると妻の姿が消えていた。

「これはどうしたことであろうか?」

 幼い息子たちは、祖母である孫尚香が面倒を見、あやしていた。

「母上。妻をごぞんじありませんか?」
「出て行った。諸葛恪の姪である自分がおれば迷惑がかかるかも知れぬと」

「え? なんですと! 確かに一族であるとは言えども、さすがに姪である妻にまで、私にまで及ぶことはありますまい」
「まあ、そうだとは思う。そなたは陸家であり諸葛家ではないのでな」

「連れ戻しにまいります」
「よせ。その弁は表面的なもので、本当は違うのだ」

「どういうことです?」

 尚香は、息子の嫁とのやり取りをどこまで話そうか悩んだ。

――尚香は孫権に孫晧を補佐すべく、この陸抗の屋敷を住いにすることはなかったが、たまに自分の孫を見に来ていた。
陸抗がしばらく屋敷に戻らないはずであるのに、嫁の青白い顔と嘔吐に気づき、問いただす。

「どうしたのだ?」
「あ、あのお義母さま、どうも悪い流行りの病かもしれません……」

 経験のある尚香にはそれが病ではなく孕んでいることが原因であるとわかっていた。

「同じ経験をしたことがある。抗が腹におるときじゃ。抗はしばらく見ないのに、どうしてそのようなことになるのか」
「ひぃっ!」

 ぎろりと睨みつけられ嫁はひれ伏して泣くばかりである。彼女の弁解を聞いていると、世話好きでおしゃべりな下人と懇意になってしまったようだ。もともと仲睦まじい夫婦ではなかったのは尚香にも見て取れた。
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