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ヒロイン三国ファンタジー
第27章 27 晋の統一後 エピローグ
「本当に死の先に極楽などあるのでしょうか? 来世や輪廻などないかもしれない。死ねば無になるのではないでしょうか」
「それは死んでみないとわからぬな」
「私はそれを知りたいのです。善良な民が虫けらのように死に、悪名高いものが天寿を全うする――」
「すまない。古い人間なのであろうわたしにはわからない」
「おばあ様。これだけは知っておいて欲しい。おばあ様は間違っておりません。あなたの天命は人を開眼させることでした。私はおかげで目覚め、仏のようにやるべきことが分かったのです」
「……。後悔はせぬのか」
「勿論しません。これから晋に向かうことはまた新たな旅なのです。ご先祖様には申し訳ないですが、もう国にも血筋にも生まれにも縛られるつもりはありません。きっと晋の皇帝、司馬炎も私の気持ちがわかるでしょう。一族の末裔には責務と重荷がのしかかっています。私は晋に行って司馬炎がそれに苦しんでいるなら救ってあげたいと思っています」
尚香には孫晧が何を言っているかもう理解はできなかった。それでも彼は今、後悔もなく、満ち足りているのだと知る。
「もうこれきりだと思いますが、お元気で」
「うん。わたしはここでそなたの事を祈っておる」
ふっと笑んだ孫晧はまるで赤子が初めて見せる笑顔のように無垢で清らかでそして不思議なものであった。
立派な孫晧の後姿は夕日の中に吸い込まれていく。それを消えるまで尚香は見続けた。
「それは死んでみないとわからぬな」
「私はそれを知りたいのです。善良な民が虫けらのように死に、悪名高いものが天寿を全うする――」
「すまない。古い人間なのであろうわたしにはわからない」
「おばあ様。これだけは知っておいて欲しい。おばあ様は間違っておりません。あなたの天命は人を開眼させることでした。私はおかげで目覚め、仏のようにやるべきことが分かったのです」
「……。後悔はせぬのか」
「勿論しません。これから晋に向かうことはまた新たな旅なのです。ご先祖様には申し訳ないですが、もう国にも血筋にも生まれにも縛られるつもりはありません。きっと晋の皇帝、司馬炎も私の気持ちがわかるでしょう。一族の末裔には責務と重荷がのしかかっています。私は晋に行って司馬炎がそれに苦しんでいるなら救ってあげたいと思っています」
尚香には孫晧が何を言っているかもう理解はできなかった。それでも彼は今、後悔もなく、満ち足りているのだと知る。
「もうこれきりだと思いますが、お元気で」
「うん。わたしはここでそなたの事を祈っておる」
ふっと笑んだ孫晧はまるで赤子が初めて見せる笑顔のように無垢で清らかでそして不思議なものであった。
立派な孫晧の後姿は夕日の中に吸い込まれていく。それを消えるまで尚香は見続けた。