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ヒロイン三国ファンタジー
第3章 3 徐州を巡って・1
「今から世の中はどうなると思う?」
「え? よ、世の中ですか?」

いきなり酒場には似合わない問いかけをされて荀彧はためらう。しかし答えねばどんな目にあわされるか分からないとなぜか思い必死に答える。

「黄巾党がおさまっても乱世に突入するでしょう」
「それでお前はどうする」

「乱世を生き抜く主に仕えたいと存じます」
「今はそれまでの休息か?」

「ま、まあ。できるだけそれまでにいろいろなものを知っておかねばなりません故」
「そうか、ではお前がもっと知らねばならぬことを教えよう。店を出るぞ」

「え? 私がもっと知らねばならぬこと? なんです?」

銭を置き、来た時と同じようにすっと曹操は音もなく立ち上がり店を出、屋敷へ歩く。その後ろを荀彧は見失わないように追いかけるようについて行った。

 屋敷の彼女の私室に入ると膨大な量の書簡で埋め尽くされており、荀彧の目を奪う。

「なんという……。拝見してもよいですか?」
「よい。こちらの半分は孫子をまとめたもの、こちらは私の詩文だ」
「あ、あなたが、これを」

 量もさることながら内容も素晴らしく荀彧は食い入るように読みふけった。得意な様子も見せず曹操はふわっとあくびをし読みふけっている荀彧の横に横たわり、ぐいっと袖を引いた。

「あ、わっ!」

「そんなものをいくら読んでも意味はない。そなたが知らねばならないのはこの私だ」
「えっ」

戸惑う彼を上に乗せ、すでに開いた足を腰に絡ませる。

「こ、これは、いったい?」

何が何だか分からないといったふうの荀彧は人生で初めて混乱を覚える。

「早く抱いてみろ。どんな時でも軍師というものは落ち着いておらねばならぬぞ」

彼女の言葉にハッとする荀彧にはこの女人が一体誰であるのか見当もつかなかった。しかし氷のようなこの女人を知りたいという欲求が湧き上がりとても落ち着いたとは言えぬ様子で彼女を一晩中抱いた。
その時に曹操は初めての子を身ごもった。
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