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ヒロイン三国ファンタジー
第11章 11 三国鼎立に向かって
 中原の曹操孟徳はかつて袁紹が治めていた許都の北にあるギョウに豪華絢爛な宮殿、銅雀台を完成させる。天子を得て、袁紹が病死してから着工しやっと献帝の住まいができたのだ。

「さあ、陛下。これからここがあなたの住まいになります。まずは宴を開きましょう」
「孟徳よ。このような高い場所に朕を住まわせるのか」

「ええ。天子は高い位置におらねばなりません」
「ふむ。そちはここまで参るのか?」

「ええ、勿論ですとも。ただ最近は私の事を天下を簒奪するものとみなす者がおります故、階段の下にて陛下とは宦官を通してやり取りすることになりましょう」
「なんと! そのような……。嫌じゃ! 前のようにもっと低い位置で構わぬ」

「陛下……。もうそろそろご自身の立場を自覚せねばなりません」

 曹操の思いは献帝には受け入れがたく、もはや自分が漢王朝の末裔であること、天子であることに強い執着心などなかった。

「そうじゃ。良いことを考えた。そなたに譲位しよう! そして朕はそなたの側におるのじゃ」
「! な、なんという事を……。そのような考えはお捨てください。なんのために私がこれまで才能あるものを求め、外と中の憂いを取り除いてきたのか。すべては陛下のために……」

「す、すまない。朕はそちと離れたくないのじゃ。せめて、そうじゃそなたを丞相から魏公の位を授けよう」
「……。陛下、お気持ちはありがたいのですが……。まあそのことは後でとりあえず、参りましょう」

 曹操に野心はあったがそれは己が天子の御位を得ることではなかった。勿論天子をお守りしたいという劉備玄徳の意志とも違う。
己の能力を全て発揮して戦乱を沈め、天下を平らげ、腐ったぬるま湯に浸ることなく次々と新鮮な泉を沸かせ、技術、文化、信仰においても向上させることにあった。
ただ彼女の高すぎる意識を理解できるものも数少なかった。
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