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人魚島
第6章 早坂先生と恋人美沙
『何か用事あったんかな?』

手櫛で乱れた髪の毛をポニーテールにしながら美沙さんがケントに火を付けた。
釣られる様に早坂先生もマルボロメンソールに火を付ける。

『その内また戻って来るさ、可愛らしい子供だよ、なんせ島の中学校のマドンナだ』

早坂先生が『アイス珈琲淹れるよ』と離れて行く。
『ふぅん』と味気無い返事をしながら美沙さんがこちらに近付いて来る。
僕は息を潜めドキドキしていた。

『な、なんやッ?アンタはッ?』

途端呆気無く見付かる僕にアイス珈琲を乗せたお盆両手に『ハハハ…春樹くんか』と早坂先生がベランダの窓ガラスを開いた。
エアコンの良く効いた風が隙間に入り込んで来る。

『誰や?この子は?』

『咲子の遠い親戚と言えば良いのかな、夏休みだからブラブラ遊びに来たんだよ、東京の蔵前からだっけな?』

『覗き見してたん?イヤらしい子供だ』

美沙さんがやれやれと腕組みするがフンワリ微笑んでいる。

『いつから居たのかな?入りなよ?外暑かっただろ?』

『は、はい、すみません…最初の方から全部見てました』

謝る僕に美沙さんが『アンタ、栗の花臭いけど?』と笑う。

『あらかた覗き見しながら咲子とセックスしてたんだろ?』

『ハハハ…』と笑う早坂先生に促され僕は早坂クリニックに入った。

『カフェラテが良いのかな?』

早坂先生が冷蔵庫を開ける。

『お構い無く…』

『けど、汗滲んでるよ?冷たいやつ淹れるから待ちなさい、咲子はどうしたの?』

『三咲さんから早坂先生に庭の畑で採れた南瓜とカボスのプレゼントです。生憎持って来るのを忘れてしまって、咲子が取りに戻りました』

『ああ、三咲ちゃん?気を使わなくて良いのに、カボスかぁ…ジンジャー割りのジンカボスとか美沙好き?まだ午前中だけど呑む?俺は呑みたい気分だなぁ』

早坂先生が煙を燻らせながら言う。

『しかし、こんなお子様にうちらの久しぶりのセックス見られるとはなぁ』

笑う美沙さん。

『仕方無いさ、美沙イク直前だったな…ハハハ…やられたね』

診察室でカフェラテを頂きながら咲子を待っていれば、しばらくして原付の情け無いエンジン音が聞こえて咲子が駆け寄って来た。
可愛い。
いちいち可愛く見えるから魔性だ。

『アンタが咲子か?えらい色っぽいなぁ、まだ14歳やろ?おばちゃん驚いたわ』

美沙さんがニコニコする。
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