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人魚島
第6章 早坂先生と恋人美沙
美沙さんが目を丸くした。

『あべこべやん?付き合う前にヤッちゃったん?春樹くんも酷やな、情け無い…早坂はちゃんと告白してからちゃんと抱いてくれたよ?』

流石早坂先生、紳士と言うか大人だなぁ。
まぁ、告白して互いの気持ちを知ってから交際に至るのが当然なんだよなぁ。
しかし僕と咲子はセックスはしても愛の告白すらしてい無い。
僕は卑怯なのか?
そんな風に感じずには居られ無かった。

『ハルキはよ言ってや?』

『え?何を?』

『決まってるやんか『好きやけん付き合って下さい』って』

『………』

『咲子ちゃん、春樹くん困ってるやん?後にしぃな』

ケントを燻らせながら美沙さんが肩を揺らして笑う。
僕は本当に咲子が好きなのだろうか?
最近の僕は妙だった。
咲子の事はちゃんと好きだった筈なのに、今ではあやふやで解ら無いのだから。
それは花子の存在が大きかった気がする。

『咲子…後で話あるから』

僕の言葉に咲子がパッと『何ッ?何ッ?』と綻ぶ。
なんだか罪悪感が身に染みた。

『出来たよ』

早坂先生がジンカボスとカボスジュースをお盆に乗せてやって来た。
甘酸っぱい香りが立ち込めている。
ジンカボスとカボスジュース共に炭酸水割りなのかシュワシュワ言っている。

『ご賞味あれ…その前に…』

早坂先生がニコニコしながら折り畳み式の木製のローテーブルを持ち出し、そこにジンカボスとカボスジュースを並べた。

『カボス…別名シトラス、学名Citrus sphaerocarpa…蜜柑科の蜜柑属、英名もカボスだよ。良くスダチと混同されがちだけど受粉した後でカボスは様変わりするから解ると思うよ。それからカボスって名前は実は元々カブチ、カブシ、カブスと訛ってた。それが第二次世界対戦後の発見された文献からはハッキリとカボスとあった。そこで我々は初めてカボスをカボスと名付けた訳、生産地は主に大分県、年間5200トンは作ってる、次いで愛媛県の145トン、次いで宮城県の15トン…如何に大分県が栽培に適しているか良く効いた解るデータだよね』

『また早坂先生のうんちくが始まったわ』

ジンカボスの香りを楽しみながら美沙さんがニヤリとした。

『まぁ、まだ飲むのは待ってよ』

言われて咲子も手を引っ込めた。

『昼飯は鰤を使おうか、大分県ではメジャー料理なんだ』

早坂先生が笑う。

『鰤ぃ?』
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