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人魚島
第6章 早坂先生と恋人美沙
『オチンチン無くなるかもよ?』

咲子が真顔で告げる。

『え?』

『魚人様は男神様でもあるけんな、あんまり花子にちょっかい出せば魚人様がヤキモチ妬いてアンタからオチンチン奪い取ってまうかも知れんけん』

そこでニタリと悪戯っぽく笑う咲子に、ああ、なんだ冗談かと気付かされる。

『冗談だよ』

やっぱりか。
やれやれ。

『だけど魚人様の呪いは間違い無くあるけん、気を付けや?呪われても知らんけんね?』

『解ったよ咲子』

僕等は居間に上がった。
すると何やら誰かとスマートホンで会話している三咲さんが縁側に座っていた。

『やから、無理やけん、パーラー辺り行けば?あん?だから、忙しいし、うち毎回言うてるやんか?料理苦手やってな…花子ぉ?花子は夏休みの宿題あるけん、やってるわ、自主的にな、咲子とちゃうけん、自主的にやってくれるんが一安心や、ミケ辺りにつくてもろたら?あん?嫌ぁ?我が儘言うなや?解ったよ、解ったよ、行けばよろしいねんな?』

どうやら誰かと揉めている様だ。
ピッと通話を切り立ち上がり『あったかなぁ?南瓜』と台所に忙し無く入る三咲さんに咲子が『母ちゃん、なんや?』と小首を傾げる。

『孝や、あいつ熱出して飯食って無いけん今から作りに行くんや…母ちゃん買い出しあるけん、やし、仮眠もそろそろ取らんといけんしやな…あ、咲子…ああ、アンタは料理無理やな、春樹くんは料理出来るの?』

『え?』

『悪いねんけど、あたしの代わりに孝のアパート行ってくれへんかな?場所は教えるけん』

『人並みには出来ます…かね?両親が旅行好きなんで、留守番中妹にカルボナーラだとかカルパッチョ作って食わしてやってます』

『カルボナーラぁ?カルパッチョぉ?そんな大層な物作らんで構わねぇよ、うどん茹でて南瓜あたり沈めたってや』

『構いませんけど…場所は?』

『これ見て行きや、地図や』

三咲さんが大判な地図を見せて来た。
一つ一つに苗字がプリントコピーされた団地の地図だった。
小学校の脇近くに団地が密集し中にアパートフィッシュソルトがあり、海岸がある。
そのアパートに"橘"と記されていた。

『なんや、男の子やとおもてたら料理出来るんやな』

『母が料理好きな影響もあります』

『ほな、おばちゃん南瓜用意するけん、待っててや』

『あたしも一緒に行くぅッ!』

『咲子は宿題や』
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