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人魚島
第6章 早坂先生と恋人美沙
美沙さんが『小腹空かない?柿の葉寿司奈良から持って来たんだ』と手招きする。
『食べたばかりですから』と謙遜するが『一つ位摘まんで行きなよ…ってアンタまた栗の花臭いなぁ、また覗いてたんか?イヤらしい子供だ』と笑う。

『やぁ、懐かしいな、良く出張で同僚への手土産に買って行ってたなぁ、美味いんだよな、あれ、開けようよ』

『一杯買って来たから、咲子ちゃんちにもお裾分けしようや』

『いくつ買って来たの?』

『6箱』

『高くなかった?』

『1万8千円位、後は早坂の為に奈良漬け買ったよ?晩酌の肴にしなさいな』

『悪いなぁ』

『どうせあたしも食べるしさ』

『で、春樹くん?また覗いてたのかな?』

『い、いえ、まさか…』

咄嗟に嘘を付く僕に二人は悟り切ったニコニコ顔だ。
僕は『あ…』だとか『だから…』とまごついた。
二人は相変わらずニコニコしながら美沙さんが紙袋から柿の葉寿司を取り出す。

『まぁ、覗いてシコったんやろ?手洗いして来たら?』

笑いながら美沙さんが洗面所に促す。
僕が洗面所の洗面台で手洗いしている頃には早坂先生と美沙さんは激しいセックスの空腹からか早速早々に柿の葉寿司を箸で摘まんでいた。
僕も輪に入り頂く事にする。
柿の葉寿司は酢漬けされた保存食料品の一種で甘酸っぱい。
それを一つばかり頂き、僕は立ち上がる。
『行きますね、ご馳走様でした』と頭を下げれば『また遊びに来なさい』と早坂先生が軒先迄見送ってくれた。
ポララミンとロキソニン片手に自転車を飛ばし橘さんのアパートフィッシュソルトを目指す。
フィッシュソルトに着き、橘さんにポララミンとロキソニンを手渡し『処方薬代金は後日で良いそうですよ』と告げて踵を返そうとしたが『酌に付き合って男同士語ろうぜ?』とアパートの中に入れられた。
仕方無いのでソファーに座れば『この辺りじゃ珍しいギネスビールだ』と何やら真っ黒のボトルパッケージの缶ビールを小さな冷蔵庫から取り出す橘さん。
開け放たれた窓辺から射し込む太陽光が眩しい中、僕と橘さんは昼間からギネスビールをグイグイやった。

『で?ポララミンだぁ?ロキソニンだぁ?効くのかな?』

『抗生物質なんで必ず効きますよ』

『飲みゃあ良いんだな?』

途端ギネスビールでポララミンとロキソニンを服用する橘さん。

『ああ、酒ミックスは身体に悪いですよッ』
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