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人魚島
第8章 能力
花子が身投げ自殺を図って亡くなったと。
僕は膝から下が無くなったんじゃ無いかと思う位前のめり万年床に倒れ込み、会社に不幸を報告して新幹線ひかりに乗り込んだ。
生憎急ぎだった為に指定席は取れ無かったが今は関係無い。
広島県の呉市からフェリーに乗り込んだ。
1時間半ばかり揺られ到着すれば埠頭にセーラー服姿の咲子が立ち尽くしていた。
僕は慌てて船から駆け下り咲子を強く抱き締めた。

『妹が…妹が…』

『解ってる』

『お腹に赤ちゃんいたけんさ、ハルキに結婚迫りよったら断られたけん…自殺したらしい』

途端張り手されたが、僕は堪えた。

『アホッ!アホたれッ!死ねぇぇぇッ!』

咲子が泣き叫びながら僕に蹴りを入れる。

『もう、解ったよ…咲子』

咲子の二の腕を掴みながら僕等はズンズン魚沼家を目指せば黒い鯨幕が張られ何やら線香臭い。
中からは啜り泣く声やお経が響く。
玄関を跨ぎ中に入れば黒い喪服の三咲さんがお経を唱えながら『春樹くん来てくれたよ』と僕を睨む。
果てし無く怒っていた。
見れば早坂先生や橘さん美沙さんも喪服で正座していた。

『花子は?』

僕の問い掛けに橘さんが煙草を燻らせながら『奥の座敷じゃ』と弱々しく呟いた。
僕は鯨幕の張られた走馬灯が回る座敷に入った。
立派な装飾の中に棺桶が並び中に小さな亡骸の花子が眠る様に横たわっていた。

『は、花子ぉ』

僕はむせび泣きながらしゃがみこみ『辛い思いさせてごめんよ』と花子の冷たく美しい顔に手を這わせた。
心から愛していたと痛感した。

『何があったんや?』

振り返れば優しく笑う橘さんが『おっちゃんに話してみ?』と小首を傾げる。
僕は全てを打ち明けた。
花子と上手く行って無い事や、ウオトの事、妊娠が怖かった事を洗いざらい話した。
橘さんは『んだな、良く解ったよ』と赤丸を燻らせる。
僕は泣きながら『本当にすみませんでした』と土下座した途端身体が浮遊した。
『わ、なんだこれッ?』空中で手足をばた付かせれば橘さんが立っていた場所に死んだ筈のウオトが立っていた。
そして『うん、やはり天使としてはギリギリ合格だ』と軽く拍手した。
周りが闇に包まれて行く。
走馬灯の輝きだけの中、僕は叫んだ。

『ウオトッ!ウオトッ!』

ウオトは『帰りなさい』と踵を返す。
僕は泣きながら叫んだ。

『ウオトッ!待ってよッ!ウオトッ!』
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