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人魚島
第8章 能力
途端ガバッと起き上がれば中央図書館で僕は眠っていた。
冷や汗がダラダラ吹き出る中、文献片手に『おかえりなさい』と笑うウオト。

『い、今のは夢?』

目蓋を擦りながら周りを見渡す僕にウオトがパタンと文献を閉じながら告げた。

『咲子と祠の中で、そう僕の墓の目の前でセックスしたたやろ?』

『う、うん』

どぎまぎしながらフンワリ微笑むウオトに頷く僕。
ウオトが笑いながら続けた。

『春樹くん、君には時空間を操る能力が備わったらしい』 

『ハァッ?』

『解らんかったか?そう時空間や』

ウオトが続けた。

『君は未来や過去に行ける能力を授かったんだよ、僕の墓の目の前でセックスしたでしょ?あのせいなんだ』

訳が解らず小首を傾げる僕に更に続けるウオトに付いて行けない。

『今垣間見たのは一つの未来の形や、有り得る一つの未来や、見て来たやろ?花子には顔面があったやろ?美しい顔があったやろ?あれは例えば花子に顔があった場合じゃ数多い未来の一つや』

『い、意味が解らない…そもそもウオトはやっぱりミイラの魚人様なのかい?』

『そうだよ、昔は魚人だった。でも、花子に惚れてこの世に舞い戻ったんだよ』

『まさか、馬鹿馬鹿しい』

『嘘じゃ無いよ?なんならもう一度続きを見せようか?』

『………』

『ほら、信じた。本当だよ?事実だよ?春樹くん君は不思議な力を手に入れたんだよ』

笑うウオト。
渋々納得する僕。

『数奇な運命の花子や僕を助けて欲しいねん』

『どうやって?』

『祈れば自ずと導かれるよ、いつでも好きな時に時空間移動は無理だけどね』

悪戯っぽく笑いながらウオトは更に続けた。

『花子は被害者なんだ、一度僕も力を使って未来を変えようとしたけど、無理難題だったよ』

『どうして僕なの?』

『花子に恋してるし、花子も君が好きやからや』

『まさか』

『両想いだったから、僕の能力の一つを分け与えたんや、君になら使い方は解るし使いこなせるよ』

『無理だ』

『やって見なきゃ解ら無いやろ?』

『神のウオトがなし得無かったんだから、無理だ』

『今君には天使の力がある、どうか僕達を助けてくれ無いか?』

『最終的にはどうなれば良いの?』

『花子の幸せだよ』

『花子の幸せ?』

随分漠然としている。

『花子が顔を得て幸せに笑う結末だよ?君にしか出来無いよ?』
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