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人魚島
第9章 枝分かれの現実
ウオトが『僕の部屋行こうか』と地下に促す。
付いて行く僕と花子。
そして蒸し暑いリネン室にて冷たい烏龍茶を手渡された。
『飲みなよ』とフンワリ笑うウオトに見てきた別の時空間を話して聞かせた。

『ふぅん、まぁ、最悪な方だね』

『まぁ、なの?』

『もっと酷いやつ、僕見て来たよ』

『………』

『とにかくあまり行かない方が良いよ、日に1回だけにしときなよ?』

『まさか、間に合わ無いよ』

『大丈夫だよ、後、龍神と接触したらしいね』

『シンイチか、はい、話しましたし帰り方も教わりました』

『帰り方と言うか本来タイムリープには精神的ショックが必要やねん、だから僕はあの日わざと精神的ショックを起こす為にフォルツァで事故を起こしたんだよ』

『つまり、精神的ショックが原因で未来や過去に行き来出来るなら、また再び魚鳴き岬から飛び降りれば別の時空間に移動出来る訳?』

『確かにそう捉えてくれても構わへんけど、あくまで身投げや、危険やわ』

『けど、それ以外方法は無いんだろ?』

『まぁね、なんならやってみる?』

ニタリと笑いながら『冗談半分だよ』と烏龍茶を呷るウオト。

『とにかく無闇にやたらにタイムリープを繰り返しても、精神や肉体が付いて行かないよ?』

『構わ無いよ』

僕は立ち上がった。

『行き方も帰り方も理解したんだ、後は花子を助けるだけだ』

『解ったよ、あまりとやかく言わ無いでおくよ』

やれやれと目蓋を閉じながら肩を竦めるウオト。
なんとか納得してくれた様子だ。

『行きたくて仕方無いって顔してるね』

『はい』

『好きなだけ行きなよ、もう止め無いよ』

『解ったよ』

僕は魚鳴き岬に花子と再びやって来た。
やはり灯台はシンイチが言っていた通り無くなっていた。
花子が心配そうに見守る中、僕は両手を開きながら身投げした。
途端微睡む。
ハッとして目覚めれば見慣れ無いアパートの一室だった。
換気扇が回転しゴーゴー唸っている。
万年床で起き上がり時刻を確認する。
朝の5時過ぎだった。
この部屋は?
辺りを見渡せば煙草臭い。
僕はどうやら寝汗まみれで万年床に横たわっている様子だ。
上体を起こし顎を擦ればジョリッと鳴った。
慌てて立ち上がりユニットバスに駆け込み鏡を覗き込む。
そこには髭面の30歳位の僕が映っていた。
驚いてスマートホンを掴み取る。
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