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人魚島
第9章 枝分かれの現実
ワクワクしながら待てば漆喰の器に和布蕪の味噌汁が入り綾部焼きの見事な茶碗に白米がよそわれている。
これまた見事な綾部焼きに伊勢海老を始めとした鯛や鮃やイカや鮪やアワビの刺し身が開き、小鉢には山菜の漬け物が納まっている。
見事な出来映えに思わず身を乗り出す僕に『何飲む?烏龍茶にしとく?オレンジジュースだってあるよ?』とウオトがフンワリ笑う。
僕は烏龍茶を指定し、花子はオレンジジュースだ。
乾杯し、三味線語りを眺めながら私服に着替えたウオトもやって来て下座に座る。
勿論上座は明さんだ。
アワビはまだ艶かしく動いていたし、伊勢海老もまだ蠢きながら頭を動かしていた。
ちょっとばかりグロテスクだったが頂く事にした。
プリプリした伊勢海老を醤油に浸す。
勿論ワサビはタップリだ。
僕は辛い物は得意だった。
白米と一緒に咀嚼すれば伊勢海老の肉の甘さが口内一杯に広がるでは無いか。
かなり美味い。
『悪くねぇけんな、うめぇよ』と明さんも生ビール片手に上機嫌だ。
『呑めよ』と言われてもウオトは『まだ未成年ですから』と謙遜する。
ウオトは烏龍茶片手に賄いの鉄火丼を食べていた。

『ここの海鮮は不味いなぁ』

ふと不意に聞き覚えのあるテノールボイスが屏風の向こうから聞こえ顔を上げると瓶ビールをらっぱ呑みするシンイチが屏風からヒョッコリ『よう』と顔を出していた。
訝しげながらウオトは眉ねを寄せた。

『こんばんは』

僕が会釈すると明さんが『なんや知り合いか?誰や?』と僕の方を眺める。
どうやら二人は顔見知りでは無いらしい。

『龍さんだよ、父ちゃん』

花子が説明する。

『観光客や』

シンイチがやって来て『なぁ、魚人、懐石の海鮮不味いぞ、これで2万とかぼったくりやろ?』とニヤリとする。
悪質なクレーマーと言った所か。

『そんな事あらん、今さっき獲れた魚やで?』

ウオトがバツが悪そうな表情でシンイチを見上げる。
シンイチは『フンッ』と鼻を鳴らしながら僕に近付き、隣に座り片膝を立てた。

『坊主、あれからどないや?』

『え?』

『また行ったんやろ?』

ブラックデビルの先端に火を付けながらシンイチが続ける。

『行って来た顔しとるからな』

『ええ、まぁ…』

『そうか』

ニヤリとしながらブラックデビルを燻らせ『まぁ、張り切り過ぎるなよ』と僕の頭をワシャワシャするシンイチ。
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