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人魚島
第9章 枝分かれの現実
ウオトの表情が珍しく『何?』と歪む。
シンイチが更に続ける。

『あらかた42年も封印されて暇やったんやろ?なぁ?まぁ、1108年も生きとるお前からすれば、たかが42年やろけどな』

ニヤニヤ笑いながらシンイチはウオトに執拗にブラックデビルの煙を吹き掛ける。
ウオトが煙たげにそれを顔の前で払う。

『42年だって充分長いけん』

ウオトが目を伏せながら呟く。

『やから暇やった訳やろ?やからこの春樹とか言う餓鬼天使に奉って花子を間接的に助けたくなったんやろ?』

『………』

押し黙るウオト。

『なぁ、お前の方はどない思ってるんや?』

不意にシンイチが僕を見据えた。
相変わらずニヤニヤしている。
白い八重歯がチラッと見えた。

『ぼ、僕ですか?』

『ああ、お前さんはもう人間や無い、立派な天使になってもうてる』

『………』

『どないな気分や?生憎俺は神やけん、天使の気持ちは解らんのやわ』

『自覚ありません』

やっと出た言葉はそれだった。

『おい、なぁ、どないしたらこんな呪い受けた顔面の無い娘に惚れれるんだ?』

『花子は優しいし、働き者だ』

『そないな雌餓鬼腐る程おるわ、あらかた人魚譲りの美貌にやられたんやろ?』

『せやあらん』

今迄黙っていた花子が口を出した。

『ハルくんはあたしの内面を好いてくれたんや、顔だけやったらお姉ちゃんとラブラブやったわ』

僕も頷く。

『はぁ、そうか』

シンイチがニヤニヤを止めて真顔になりながら『なぁ』と続けた。

『顔が欲しいなら、くれてやるぞ?』

『え?』

僕は目を丸くした。

『ただ、俺好みな顔になるけどな、それで構わんのやったら、くれてやるぞ?あん?』

花子も動揺している。

『ただし、向こう500年姫巫女としと仕えよ、やろ?』

ウオトが腕を組みながらピシャリと言い放つ。
向こう500年?
馬鹿なッ?

『あん?そうだよ、主に俺の下の世話、つまりはセックスに付き合うて貰うぞ』

『500年も?』

ウオトが鼻で笑う。
珍しく挑発的な姿勢だ。

『ウズメはどうした?』

『ウズメならよろしくやってる』

ウズメ?

『アマノウズメ、天照の我が儘に付き合う優しい女の子だよ』

ウオトがシンイチから僕に視線を変えながら教えてくれた。

『アマノウズメノミコト解りやすく言えばおかめさんの事やで』
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