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人魚島
第10章 東京編
は、花子が妊娠?
僕の子供だろうか?

『花子は悩んだ。そりゃ誰の子供か解らんけんな。アンタの子供なんか…はたまた…引っ掛けた客の精子の子供なんか解らん泣いとったけんな、そないな連絡1年半前にくれたやろ?』

全く身に覚えが無かった。
鳥肌がくま無く立った。

『で、心配して、うち一回魚姫休んで来たやろ?これだって覚えとらんけ?』

ミケさんわざわざ来てくれたのか。

『覚えて無いです』

『アンタなんか別人みたいになりはりはったなぁ、いつものアンタは飢えた野犬みたいな目付きさらしとんのに…なぁ、何があったんや?』

ブラックデビルを灰皿に押し付けジュッと消火しながらミケさんは続ける。

『でな、そん時かな?酔った勢いでうち等ヤッちゃったのが始まりや、んでうちを気に入ったアンタは1年前にうちをはるばる人魚島から呼び寄せたんやで?しっかりしぃな?なぁ、なんで覚えとらんのや?』

『多分さっき覚醒剤やったからです』

咄嗟に嘘を付いて誤魔化す僕。
成る程合点が重なったぞ。
全てはこの時空間で弱かった僕が原因なんだ。

『敦とつるまんかったら明さんもうんて言ってたよ、きっと。アンタ常にマリファナ臭かったもん』

嗚呼…僕はソファーの上で項垂れた。
僕の責任だ。

『次第に過酷な仕事に耐え兼ねて花子は精神を患い始めた。そんな花子を見ててアンタも病んだ、これが今の終着点、今の結末や、ご覧の有り様だよ』

『…何故花子はそれでも、こんな僕と?』

『さぁね、惚れてたからとちゃう?』

『…どうしてこうなってしまったのかな』

『幼くていびつな恋愛やったからちゃう?ほら、呑みや?寒いやろ?ストーブ着けたるけんな』

僕は力が抜けて行く感覚を感じながらケントを燻らせ、ウイスキーを一気に呑み干した。
身体がほんのり温かくなる。
いびつな恋愛か、まさにそうだな。
幼過ぎた。

『花子は結局子供どうしたんですか?』

ストーブを着けるミケさんに訊ねる。

『あん?確か結局卸したよ?なんで?』

やはりか…嗚呼…。
僕は思わず自嘲しながらウイスキーを呑んだ。

『シャブ打つ?』

『うん』

ハッとして慌てて口を右手で押さえ付けたが遅かった。
ミケさんが素早く使い古しの汚い不衛生な注射針を僕の左腕に素早く射したのだ。

『ああ、痛いッ!』

ミケさん迄覚醒剤に手を染めるなんて。
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