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人魚島
第10章 東京編
『なんか食う?』

『うん』

僕は弱々しく笑いながらミケさんと懐かしの広島焼きを食べた。
モヤシが大量に挟まっている。
ミケさんは生ビールを呷りながら『またやったんか?』とニヤリとする。
僕は至って情け無く『はい』と賭博黙示録カイジを回した事を打ち明ける。

『仕事始めたんやってな?花子からLINE来てたわ、えらい喜んでたよ?』

『ホストですよ』

『やからまた頭脱色したんけ?前の下品なオレンジ色よかだいぶマシちゃうけ?』

『結構それが向いてるみたい、イシコリ…石五里さんって太客が付いてくれたんです、なんだったかな、永久指名してくれるってさ』

『なら、アンタが今日ここで油売ってる間にその女が店に来ても支払いの内45%は売り上げになる訳やな?』

『え?』

僕はいまいち永久指名制度を知ら無い。
イシコリドメにGoogleで調べろと言われたが未だに調べてい無いのが実情だ。
正直な話調べるのが多少煩わしかったのだ。

『あたしかて水商売しとったけんや、解ってるよ。永久指名制度、つまり名前通り永久に指名するシステムやわな、これがなけりゃホストはほぼほぼ食って行けねぇよ、アンタがいくら外で遊んで様が、その石五里って女が店に来る度にアンタには自動的に売り上げが入る訳や、その女、ルイ13世はもう下ろしたん?』

『ルイ13世?』

『ホストの世界じゃ250万する馬鹿高いやつや』

『トラディションが限界です』

『はぁ、まぁ、けど凄いやん、トラディションとか200万前後するブランデーやろ?ほな、次はルイ13世、そしてロマネやな』

広島焼きを大口を開きながら食すミケさんに『ロマネって?』と生ビールと呷りながら訊ねる僕。

『通称ロマネ、ロマネコンティな、300万はするよ?』

ニヤリとしながら肴のチャンジャをつつくミケさん。

『高級車買えちゃうけんな』

『まさか、馬鹿馬鹿しいッ』

『けどさ、その馬鹿馬鹿しいのも有り得るんだよな、あたしはほら倹約家やけんホストクラブなんかお伽噺な世界にゃ興味無いけんや、滅多に行かんけど、ロマネ勝ち取ったらアンタはホスト向いてる証拠やで?』

使い捨て割り箸の先をこちらに向けながらミケさんは続けた。

『一生やるつもりなんか?肝臓いわすぞ?』

『まさか、借金返済したら辞めて足場鳶にでもなりますよ』

『ふぅん、ま、頑張りぃな』
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