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人魚島
第10章 東京編
『知らねぇよッ!』

『てめぇ…』

僕は途端春樹を突飛ばし馬乗りになって顔が解ら無くなるまで殴った。
春樹が『止めろッ!』と懐から折り畳み式のバタフライナイフを取り出し横に切る。
すかさず僕の頬が僅かに切れた。
後数㎝前に出ていたら、目をやられていた。
危なかった。

『花子はくれてやるッ!だからミケには手を出すなッ!』

『ウオトとの約束を忘れたのかッ?二人ワンセットで幸せになるんだ、花子の事を必ず幸せにするって…忘れたのかッ?』

僕は春樹を殴り続けた。
血が患者着に飛んだ。

『知るかッ!離せよッ!』

僕は春樹からバタフライナイフを奪いそれで春樹の腹を刺した。
ドバッと血が溢れた。
迷う事は無かった。
僕は14階の高さから春樹の死体を窓から投げ捨てた。
そしてハァハァと深呼吸しながら後退り患者着のままJR東京総合病院から深夜抜け出した。
そして決めた。
花子とこの時空間で幸せになろうと。
迷う事無くサンダルでアパートに帰る。
春樹はT型だったのだ。
だから僕を助けに来たが、助けたその相手は僕だった。
僕はずっと自分はAB型だと信じていたが、違うらしい。
帰宅して僕の腹の傷口に泣く花子を宥め語り出した。
自分は別の時空間、つまりは過去から来た事、別の過去の花子には顔が無い事、そんな花子を救いたい事を話して聞かせた。
最初は渋り信じなかった花子だったが、僕の『信じろ』に心動かされたのか『うん…信じる』と僅かに微笑んだ。
そんな花子を抱き締めながら僕は『安心してよ』と花子に声を掛けた。
花子は震えていたし、僕が春樹では無い事に酷く動揺していた。
しかし、そんな事も束の間、花子の震えは治まった。
その日はゆっくり眠る事にした。
翌日12月29日、昼間のニュースには顔面ボコボコに腫れた身元不明な飛び降り死体がJR東京総合病院で見付かったと報道されていた。
春樹だ。
僕が刺し違えた春樹だった。
花子は震えていた。
そんな花子を抱き締めながらテレビを消した。

『体調どう?』

もはや春樹では無い僕が訊ねると一瞬ビクッとする花子。

『熱が下がらんけん、辛いわ』

花子は相変わらず風邪の様な症状を訴える。
インフルエンザかな?
そう勘繰り病院に連れて行きたいが年末だった為に総合病院しか開いてい無い。
タクシーでJCHO東京新宿メディカルセンターに赴いた。
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