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人魚島
第10章 東京編
そしてジンやらウイスキーの類い全ても台所の流し台に流し捨てた。

『お酒位はハルくんは呑んでも構わ無んや無いの?』

『見てたら花子呑みたくなっちゃうでしょ?』

『そ、そんな事無いけん』

『よし、婚姻届区役所に貰いに行って書くだけ書いておこうか』

『ねぇ、ハルくん?』

『ん?』

『あなたがここに居るって事は顔の無い花子は今独りぼっちなの?』

『多分僕は眠ってるから肉体はあっちにあるよ?』

『けど、もう二度と帰ら無いんでしょ?』

『………』

『なんだかその花子が可哀想でさ』

『………』

『あたしだけ幸せになってええんかな?』

『良いに決まってるじゃ無いか、散々君は"春樹"で思い悩み苦労して来たんだから、次は君の番だよ』 

『ありがとう、ハルくんッ大好きだよッ』

『一緒に幸せになろうね』

『うんッ』

『さて、新宿区役所行って婚姻届貰いに行って昼飯なんか外で食べようか』

『うんッ』

花子には悪いが僕はこの花子と幸せになりたい。
いつも苦労ばかりだったこの少女を幸せにしてやりたい。
花子、君にはウオトが愛してくれてるだろう?
僕が居無くとも大丈夫、きっと。
僕は花子としっかり手を握り合いながら新宿区役所に向かう。
中は年末ともあってすいていた31日から年明け3日迄連休らしくギリギリ取りに来れたのだと来て初めて知り、思わず花子と吹き出した。
総合窓口でウロウロしていると恰幅の良いオバチャン係員が僕等のしっかり握られた手を見て一言『ああ、住民課だよ』と笑う。
『何がですか?』と目を丸くすれば『婚姻届欲しいんでしょ?』とニッコリする。
耳迄僕等は真っ赤になり『あ、ありがとうございます』とお礼を言って奥の住民課に急ぐ。
しかしまさか花子と結婚とは。
いくらかの時空間で花子と一緒だったが結婚は流石に初めてだった。
花子と結婚かぁ…ニヤニヤが治まらない。
人目もはばからずイチャイチャしながら待ち合い番号58番が呼ばれるのを待った。
自販機で花子は冷たい麦茶を僕はホットレモンを買った。
花子はお腹の赤ちゃんに悪いからとカフェインすら摂取するのを止めてアイス珈琲を諦めた様子だ。

『記念に持って来ちゃった』

花子が妊娠検査薬をポケットから取り出した。
そこには窓が2つ付いておりそのどちらにも濃紺の色で縦に線が入っていた。
生憎男の僕には意味が解ら無い。
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