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人魚島
第10章 東京編
『スサノウの奴は高天原に帰ったわ』

『え?』

『高天原、通称神の国や。仰山神が住んどる窮屈な世界や』

『はぁ、またどうして?』

『弟は元々ドラゴンゴッドの経営者でな、ナンバーワンやった。そんな弟に当時彼女やったイナダヒメを紹介したんがアウトやったわ』

ブラックデビルを燻らせながらシンイチが更に続けた。

『イナダヒメはすぐさま弟にのぼせて俺と別れた。それから普通のOLやったイナダヒメは会社辞めてまずは手コキの風俗嬢になりやがった、馬鹿な女だよ』

『それからどうなったの?』

『ああ、初なあいつは一発で病んだよ、身も心もな。そっから店クビになる迄半年掛からんかったな、んでよ、馬鹿なイナダヒメはソープランドに身を沈めやがった。何回も身籠ったよ馬鹿な女だ』

サングラス越し、シンイチの目は珍しく寂しげだ。

『んで、自殺未遂、俺は弟に何百ッ!』

シンイチがクラクションを鳴らす。

『何千ッ!』

また鳴らすシンイチ。

『何億使う馬鹿なイナダヒメと弟を別れさせようとしたんやッ!』

肩で呼吸しながら『チッ』と舌打ちし、灰皿にブラックデビルを捩じ込むシンイチ。

『しかし別れんかった。はッ馬鹿な女だよ、やがて幻の酒アシエンダラカピリャを下ろしてイナダヒメはトンズラ、3億5千万もの借金がドラゴンゴッドにのし掛かった。やけど姉貴が見兼ねて助けてくれたんや。助かったよ、あれは。やがて馬鹿たれな弟はイナダヒメ見捨てて高天原に単身帰りやがった。イナダヒメを残してな、イナダヒメはヤクザの妾に成り下がってオレオレ詐欺で検挙、今のシャブのせいもあって刑務所内の閉鎖病棟や』

『何故裏切られたのに、会いに行くんですか?』

『あん?妙な事聞くんだな?愛してたからだよ、馬鹿』

それだけ言ってアクセルを踏み込み高速道路にスープラを滑らせるシンイチ。
イナダヒメ、何故スサノウノミコトに靡いたんだろうか?

『はぁ、セックスの相性やな』

『え?』

見透かした様にシンイチが唸り、続けた。

『イナダヒメとはセックスの相性最悪やった。俺も滅多にイカんかったし、イナダヒメもイカんかったし、ボロボロなセックスやった、一方弟とよろしくヤル時はすぐさまオマンコオマンコあんあんイクイク言うてな、絶頂しとったらしい』

シンイチが再びブラックデビルの先端にデュポンで火を灯した。
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