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人魚島
第10章 東京編
イナダヒメはゆっくり瞬きしながら僕とシンイチを不安げに交互に見上げた。

『叔母さん、こいつは春樹18歳、俺のドラゴンゴッドで働く見習いのホストだ』

『こ、こんにちは…春樹です』

『………』

イナダヒメはとにかく不安げに僕等を見上げ『ス、スサノウでしょ?』と僕の二の腕を掴んだ。
おびただしい量のリストカット跡が白く大量に彫られ、腕にはポイントタトゥーの星が彫られていた。

『ちゃうちゃう、叔母さん、こいつはスサノウや無い、春樹や』

『は…春樹?だ、誰?』

『やから、俺のドラゴンゴッドの従業員や』

イナダヒメがゆっくり僕の二の腕から手を離し、ガリガリとリストカット跡を掻きむしった。
長い爪で僅かに血が滲む。
そして何やら再びブツブツ言いながら塞ぎ込む始末。

『アカン、叔母さん機嫌悪いわ、帰るぞ、春樹』

プイッと踵を返すシンイチ。
僕は気付く。
イナダヒメが何か言っている。

『シンイチ…イナダヒメ何か言ってるよ?』

『んなアホな、自発的には喋らん』 

『けど、さっきから何かブツブツ言ってるよ?』

『あん?』

イナダヒメに近付き、イナダヒメのヨダレで光る口元に耳を寄せるシンイチ。
みるみる内にシンイチのでかいその両目に涙が溢れた。
そして溢れ落ちシンイチの頬を濡らした。

『シンイチ…』

僕はイナダヒメの唇の動きを追う。

『シンイチ…好きだよ?』

『イナダヒメ…』

シンイチがか細いイナダヒメを抱き締めた。
そして『俺もや、俺かて骨の髄迄愛してるッ』と涙を溢した。

『シ…シンイチ…好きだよ?』

繰り返すイナダヒメをうんうんと抱き締め続けるシンイチ。
不意に『離れて下さい』と刑務官がやって来て邪魔して来る。
シンイチはズルズルと鼻水を啜りながら刑務官を睨み付け『帰るぞ、春樹』と踵を返す。
慌てて付いて行く僕にシンイチが『今見た事は誰にも言うなよ?特に俺が泣いてたとこは』と耳打ちし涙を拭った。
タクシーに揺られながら何故シンイチが僕にイナダヒメを会わせたのかふと疑問になる。
隣に座るシンイチは腕を組み、脚を組んで目蓋を閉じて眠っている様だ。
僕は雪が降りしきる景色をボンヤリ眺めながら景色をスマートホンで不意に撮影し、花子にLINEで送った。
花子からは返信が無かった。
不安から花子に思わず電話したが繋がらない。
何度掛けても繋がらない。
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