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人魚島
第10章 東京編
『解りました』
項垂れながら診察室を出れば花子がキョトンとしている。
『やあ』と隣に腰掛けて花子の肩を抱く。
『どうしたの?』
『いや、花子、もう一度採血だって』
『一体どうしたの?』
『いや…だから、その…』
言える訳が無かった。
『魚沼さん、採血してみましょう』
診察室のスライド扉が開き、中に入る花子の背中を見詰めながら僕は待合室で声を殺して泣いた。
2~3分程してパッチを貼られた花子が『痛く無かったよ』と何も知らされずにニコニコしながらやって来た。
僕は然り気無く涙を拭いながら『昼飯食いに行こうか』と力無く笑った。
花子はキョトンとしていた。
医者からはまだ何も知らされてい無いのだ。
どうか誤診であってくれッ。
僕は祈る様に足早にJCHO東京新宿メディカルセンターから出た。
雪が降りしきる中、近くのうどん屋で身体を温め落ち着こうとするが、花子のHIVウイルス感染が頭をちらつく。
頭を振って誤診だ誤診だと言い聞かせる。
花子は何も知らず狐うどん啜っている。
僕はぐらつく灰色の世界の中、七味唐辛子をガンガンにうどんに入れて食べた。
ツーンとし、涙が溢れたが花子を思って溢れた涙だ。
『ハルくん、赤ちゃん用の服見に行こう』
花子が手を握って来る。
僕はそれを硬く握りながら会計し、雪が降りしきる中大手ベビーグッズ販売の赤ちゃん本舗に向かう。
花子がガラガラ等を弄りながら『女の子かな?男の子かな?』と笑う。
僕は『黄色かオレンジ色辺りにしとくか』と力無く笑った。
そうだ8ヶ月後には花子に子供が生まれるのだ。
僕等は妊婦や幼子を連れた女性に紛れながらベビー服を見繕った。
可愛い黄色の小さな服にした。
帰宅し、花子が『肩凝るなぁ』と首筋を片手で揉んでいた。
すかさず僕がマッサージしてやれば、花子が『あ…力加減最高だよッ』とはしゃぐ。
しばらくマッサージしながら花子を後ろから抱き締めた。
『今日はいつもに増して甘えん坊やなぁ』
『花子が可愛いから』
花子の頭に鼻先を埋めながら僕は囁く。
『愛してるよ花子』
『どないしたんや?』
『愛してるから、愛してるよって言ったの』
『あたしも愛してるよ?』
『知ってるよ』
不意にスマートホンが鳴った。
着信だ。
シンイチからだった。
『よう』
『あ、シンイチ?』
『行って来たか、病院』
項垂れながら診察室を出れば花子がキョトンとしている。
『やあ』と隣に腰掛けて花子の肩を抱く。
『どうしたの?』
『いや、花子、もう一度採血だって』
『一体どうしたの?』
『いや…だから、その…』
言える訳が無かった。
『魚沼さん、採血してみましょう』
診察室のスライド扉が開き、中に入る花子の背中を見詰めながら僕は待合室で声を殺して泣いた。
2~3分程してパッチを貼られた花子が『痛く無かったよ』と何も知らされずにニコニコしながらやって来た。
僕は然り気無く涙を拭いながら『昼飯食いに行こうか』と力無く笑った。
花子はキョトンとしていた。
医者からはまだ何も知らされてい無いのだ。
どうか誤診であってくれッ。
僕は祈る様に足早にJCHO東京新宿メディカルセンターから出た。
雪が降りしきる中、近くのうどん屋で身体を温め落ち着こうとするが、花子のHIVウイルス感染が頭をちらつく。
頭を振って誤診だ誤診だと言い聞かせる。
花子は何も知らず狐うどん啜っている。
僕はぐらつく灰色の世界の中、七味唐辛子をガンガンにうどんに入れて食べた。
ツーンとし、涙が溢れたが花子を思って溢れた涙だ。
『ハルくん、赤ちゃん用の服見に行こう』
花子が手を握って来る。
僕はそれを硬く握りながら会計し、雪が降りしきる中大手ベビーグッズ販売の赤ちゃん本舗に向かう。
花子がガラガラ等を弄りながら『女の子かな?男の子かな?』と笑う。
僕は『黄色かオレンジ色辺りにしとくか』と力無く笑った。
そうだ8ヶ月後には花子に子供が生まれるのだ。
僕等は妊婦や幼子を連れた女性に紛れながらベビー服を見繕った。
可愛い黄色の小さな服にした。
帰宅し、花子が『肩凝るなぁ』と首筋を片手で揉んでいた。
すかさず僕がマッサージしてやれば、花子が『あ…力加減最高だよッ』とはしゃぐ。
しばらくマッサージしながら花子を後ろから抱き締めた。
『今日はいつもに増して甘えん坊やなぁ』
『花子が可愛いから』
花子の頭に鼻先を埋めながら僕は囁く。
『愛してるよ花子』
『どないしたんや?』
『愛してるから、愛してるよって言ったの』
『あたしも愛してるよ?』
『知ってるよ』
不意にスマートホンが鳴った。
着信だ。
シンイチからだった。
『よう』
『あ、シンイチ?』
『行って来たか、病院』