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人魚島
第10章 東京編
『はい』
『インフルエンザか?』
『それが…あの…』
背後で母子手帳に早速11週目と日記を付け始める花子。
『なんや?なんかあったんか?』
『………』
『聞いたるけん、うち来いよ、渋谷だ』
『解りました』
通話を切り花子に出掛ける旨を伝え、チビと遊ぶ花子を置いて僕は渋谷に向かった。
駅前大通のガードレールに目立つ青いチクチク頭のシンイチがブラックデビルを燻らせながら立っていた。
『寒いだろ?ここじゃなんだから、俺のマンション来いよ』
凍えながら駅前大通に面したタワーマンションに入る。
ガードマンが居て、監視カメラも僕を睨んでいる。
シンイチがオートロックを解除し『行くぞ』とエレベーターのボタンを押す。
最上階21階に着く。
中は大理石の玄関だった。
ヴィヴィアンウエストウッドのロッキンホースゴルフやスニーカーが丁寧に靴箱に飾られる様に並んでいた。
20畳もある居間に黒いレトリバーマークが暖炉の側で背中を丸めていた。
豹柄の絨毯、イタリアンソファーがL字型に並びイタリアガラスのローテーブルが鎮座している。
でかいシステムキッチンの壁には世界各国の洋酒が並び、壁には白熊らしき剥製の首が生えていた。
『何か呑むか?』
『お構い無く』
『つれねぇな、おい、付き合えよ』
シンイチがウイスキーボトル片手にソファーに座り脚を組む。
僕もゆっくり隣に腰掛けた。
シンイチがロックグラスにトクトクトクッとウイスキーを注ぎ『で?』と顎を上げた。
僕は戸惑いつつも『花子はHIVだ』と静かに告げた。
『まさか』と笑うシンイチ。
しかし、ニヤニヤが消えた。
シンイチがブラックデビルを灰皿にトントンしながら『血液検査したんやろ?』と目を丸くする。
『ああ、したよ、先週ね』
『陽性やったんか?』
『まだ解ら無いです。誤診もあるから…』
そこ迄言って僕は肩を震わせながらむせび泣いた。
『そうか、えらいなんや、大変な事になったんやな』
僕の背中を撫でながらシンイチが『まぁ、誤診かてあるやんか』と力無く笑った。
『けど、花子は明らかに最近体調で優れなかった。あれはHIVウイルス感染の初期症状です』
『まさか、まだ解らんけん』
『花子死ぬのかな?』
『花子にはそれ話したんか?』
『いや、まだです、まさか話せませんよ、花子は妊娠に喜んでる』
『せやなぁ』
『インフルエンザか?』
『それが…あの…』
背後で母子手帳に早速11週目と日記を付け始める花子。
『なんや?なんかあったんか?』
『………』
『聞いたるけん、うち来いよ、渋谷だ』
『解りました』
通話を切り花子に出掛ける旨を伝え、チビと遊ぶ花子を置いて僕は渋谷に向かった。
駅前大通のガードレールに目立つ青いチクチク頭のシンイチがブラックデビルを燻らせながら立っていた。
『寒いだろ?ここじゃなんだから、俺のマンション来いよ』
凍えながら駅前大通に面したタワーマンションに入る。
ガードマンが居て、監視カメラも僕を睨んでいる。
シンイチがオートロックを解除し『行くぞ』とエレベーターのボタンを押す。
最上階21階に着く。
中は大理石の玄関だった。
ヴィヴィアンウエストウッドのロッキンホースゴルフやスニーカーが丁寧に靴箱に飾られる様に並んでいた。
20畳もある居間に黒いレトリバーマークが暖炉の側で背中を丸めていた。
豹柄の絨毯、イタリアンソファーがL字型に並びイタリアガラスのローテーブルが鎮座している。
でかいシステムキッチンの壁には世界各国の洋酒が並び、壁には白熊らしき剥製の首が生えていた。
『何か呑むか?』
『お構い無く』
『つれねぇな、おい、付き合えよ』
シンイチがウイスキーボトル片手にソファーに座り脚を組む。
僕もゆっくり隣に腰掛けた。
シンイチがロックグラスにトクトクトクッとウイスキーを注ぎ『で?』と顎を上げた。
僕は戸惑いつつも『花子はHIVだ』と静かに告げた。
『まさか』と笑うシンイチ。
しかし、ニヤニヤが消えた。
シンイチがブラックデビルを灰皿にトントンしながら『血液検査したんやろ?』と目を丸くする。
『ああ、したよ、先週ね』
『陽性やったんか?』
『まだ解ら無いです。誤診もあるから…』
そこ迄言って僕は肩を震わせながらむせび泣いた。
『そうか、えらいなんや、大変な事になったんやな』
僕の背中を撫でながらシンイチが『まぁ、誤診かてあるやんか』と力無く笑った。
『けど、花子は明らかに最近体調で優れなかった。あれはHIVウイルス感染の初期症状です』
『まさか、まだ解らんけん』
『花子死ぬのかな?』
『花子にはそれ話したんか?』
『いや、まだです、まさか話せませんよ、花子は妊娠に喜んでる』
『せやなぁ』