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浦島と亀
第2章 雨の日の事件

 夏の盛りのころ。

 通り雨を避けたお堂の軒先で、店によく来ていた三人組の若者と行き会った。


「亀吉じゃないか」

 店での名を呼ばれ、あたしは愛想笑いを浮かべた。

「あら」

「ひとりで雨宿りかい?」

「使いの帰りなのさ」


 ひとしきり世間話をしているうち、雲行きが怪しくなった。


「まだ当分あがりそうにねぇな」


 激しく降る雨を見やったあと、仲間同士で目くばせしたかと思えば、いきなり両脇を取られお堂の中に連れ込まれた。


「雨で冷えただろう?俺らが温めてやるよ」

 ぎらぎらと獣じみた目を光らせ、男たちが飛びかかってくる。

「よしてよ!」

 いくら商売女だって、こんな乱暴な行為はごめんだった。
 あたしは抑えつけにかかられた手足をばたつかせ、裾を割ろうと伸ばされる手をひっかき、必死に外へ這い出ようとした。


「おとなしくしろ!」


 もみ合ううちに頬を張られ、ゆるく着付けた単衣の胸元がはだけ、結い髪もほどける。

「いやっ」

 差し込まれた手で乳房を揉みしだかれ、柄にもなく涙がこぼれた。


 と、そのとき人影が目に入った。


 雨から逃げるように軒先に走りこんできたその人は、浦島だった。
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