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浦島と亀
第2章 雨の日の事件

「助けて!おねがい!」

 あたしは泣きながら浦島を見た。


 男たちがぎょっとして動きを止め、ふりかえる。


 浦島は驚いた顔をしたが、無言で段を上がって近付いてきた。


「なんだ?」

 男たちは浦島を睨んだ。

「やめておけ」

「なんだと!?」

 短く言われ、顔色を変えて立ち上がったが、三人とも頭一つ分以上も大きな浦島に腰が引けており、威勢がいいのは口先だけだった。


「この亀吉は金さえ払えば股を開く商売女だぞ」

「邪魔するな」


 浦島の前で恥辱的なことを言われ、あたしは居たたまれず両手で顔を覆った。


「おまえ、網元の娘と縁談があるんじゃなかったか?」

 冷静な浦島の声が聞こえる。

「あんまり娘が熱上げるもんで、しぶしぶ承知したって網元に聞いたけどな……こんな奴だと知れたらどうなるだろうな」


 男の一人が悔しそうに舌打ちをした。

「くそ!女の味も知らねぇやつは話にならん」


「おい、やめんのかよ」

「こんな女、金さえ出しゃいつでもやれるだろうが」


 捨て台詞を吐いて男たちは雨の中に飛び出していった。
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