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貴方だけに溺れたい
第5章  枷

疲れた……。

エンジンを切ると同時に、長い溜め息を吐いていた。
漸く森林公園に着いて、これから森川にも会えるというのに、精神的な疲労が肉体の疲労を悪化させてしまったような気がする。

陽子と弥生と過ごした時間が苦痛だったわけでは無い。
しかし竹村の話題が、葵の気持ちに新たな葛藤を植え付けていたのは確かだ。

"想像力と理解は大切"
確かに陽子の言っていた事は正しいのだと思う。
けれど、いざ自分が"被害を受けている立場"になっても、そう言えるのだろうか?

勿論、それは今回の弥生の怒りを宥める為の助言だという事は分かっていたけれど、『認知症かもしれない』、或いは何らかの精神的な病かもしれない……そういった理由で片付けられない事だってある。

寧ろ、そんな憶測をする事自体が忌々しく思えた。

しかし陽子に対する直接的な苛立ちは、今はもう消えている。
納得がいかない思いもあったが、時間の経過と共に、その苛立ちは自分自身に向けて感じ始めていたのだ。

竹村に関する事だけでは無い。
家から公園に着くまでの間に、葵の苛立ちは智之や今の生活に対する不満や、自分自身の人生に対する不安にまで広がっていた。

深みに嵌まると、なかなか抜け出せないのはいつもの事。

自分を痛め付けるだけのマイナス思考だと分かっていても、きっかけ1つで堰を切ったように不満ばかりが溢れてくる。
そして最終的には、そんな人生を選んでしまった自分の選択に後悔し、断ち切る勇気の無い自分が嫌になるのだ。

我ながら、自滅するタイプだと思う。
ストレスを溜めるだけだと分かっているのに、自ら負の感情を肥大させてしまっているのだから。

しかし、いつまでもこんな場所で落ち込んでいたくも無かった。
気持ちがささくれていても、森川に会いたいという気持ちは変わらない。
寧ろ、無性にその存在を欲している自分にも気付いている。

ただ会って話をして一緒にお弁当を食べるだけなのに、その一時が今、たまらなく恋しい……。



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