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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
「お疲れさま。明日もよろしくね」
「最低でも1時間で終わらせるから!」
「当然。みんなで頑張ろう」
17時35分。
午後に本社会議から戻った店長が加わり、葵は横内と共に無事に定時で上がる事が出来た。
明日の予定は、店長と葵が9時半出勤。遅番で2人が加わり、閉店時間前に横内が出勤して作業を開始しする。
遅くとも21時には終了するのが目標。
専用出入口までの間に業務の流れと、明日は婚家の法要の為に休日出勤となる横内の話を聞きながら、葵の歩調は無意識にも速まっていた。
「長男のお嫁さんが何もやらない人でさ、立場的にも断れないわけよ」
「お嫁さんって、そんなにする事があるんですか?」
「どっちかというと、その後の斉食の時ね。子供が多いから飽きないようにビンゴゲームなんかもやるの。景品も揃えなきゃならないからけっこう面倒くさいんだ」
「聞いてる分には楽しそうだけど」
「毎回よ!?まぁ、堅苦しいお家柄じゃ無いから、まだ良い方なんだけどさ」
長男の嫁は親戚との関わりに一線を引いている人らしい。
次男の嫁の横内は、高校2年の息子に言わせればパリピ。そして体育会系で頼まれたら断れない性格。
横内や他のスタッフの話を聞いていると、色々な家系とお嫁さんがいるなとしみじみ思う。
"職場はエネルギーを補給する場所だから、棚卸しの為の休日出勤は寧ろ大歓迎"
そんなパワフルリーダー横内と「お互いに頑張ろう」と言い合って別れ、駐車場の隅に停めた車に乗り込んだのは17時43分。
まだ公園に居るかな……。
熱気の充満した車内でエンジンをかけ、窓を全開にしながら、葵の気持ちはもう公園へと向かっていた。
今からだと50分には着くだろう。
森川が閉園時間の20時まで公園に居るとは考え難いけれど、ほんの数分……数秒でもいいから、会える幸運に恵まれたい。
目的は勿論、トウモロコシのお礼の為ではあるけれど、時間が近付く毎に、ただ純粋に"会いたい"と思う気持ちだけが強くなっていたのだ。