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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
本当に、ご飯もおかずも全部、取り上げてやれば良かった……。
記入を終えたノートを食器棚の奥に仕舞うと、シンクの中の洗い物を片付けてから明日の夕食の準備に取り掛かった。
準備といっても、炊飯器をセットしてから智之が食べるレトルトのカレーを用意して、簡単な野菜スープを作るだけだが、苛立ちもあるせいか、正直、面倒くさい。
自分1人の夕食くらい、自分で用意すればいいのに。
なんなら親と一緒に住んでるんだから、親子みずいらずで食事をしながら、嫁には聞かせられない話でもすればいいのに。とも思う。
どうせ"子供の話題"に触れられたく無いから、親の方には行けないんでしょうけど……。
2食分に分けたスープとラップに包んだトウモロコシご飯の残りを冷凍庫に入れ、一通りの作業が終わった事を確認すると、葵はエプロンを外しながらキッチンを出た。
時刻は20時40分。
入浴までにはまだ1時間以上の時間があるから、その間に寝室で本の続きを読みたいと思った。
智之の事でいつまでも苛立っていても仕方がないし、正直、あのシーンの続きも気になっているのだ。
「冷凍庫にスープ入れておいたから、明日の夕食に食べてね」
「えっ?なに?どーゆー事?」
「……明日、棚卸しで遅くなるから」
「えー、聞いて無いよー?」
しかし燗に障る事は立て続けに起こるらしい。
寝室の前で立ち止まった葵は、ソファに寝転んだまま自分を見上げる男を見下ろした。
驚いたとばかりに目を見開き、言葉通りの抗議の色を浮かべた表情にわざとらしさは感じられなかったが……。
これは、何かの試練なの?
こっちは月始めと先週に言った覚えがあるし、テレビの側に掛けたカレンダーにも書いてある。
確かにその話をした時は今と同じ、テレビを見ていた時だけど、毎日毎晩テレビを見ていてもカレンダーには一切目を向けて無いってこと?
人の話を聞いているようでいて聞いて無い。
勿論それは分かっているつもりだけれど、さすがにこれは……。
「取り敢えず……そういう事だから……」
だけど無駄な言い争いはしたく無い。
努めて苛立ちを堪えながら寝室に入ったが、無意識にも歯を食い縛っていた。