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貴方だけに溺れたい
第7章  貴方に逢いたい

季節は春から夏に変わろうとしていた。
陽が高く昇るにつれ気温は上がり、開花を迎えた薔薇の花が、何時にも増して甘く濃厚な香りを発している。

そんな中、呂季は女の声に引き寄せられるように近付き、気が付けば石造りの柵に手が届く位置にまで辿り着いていた。

ガゼボの床は地面よりも1メートル程高く、六角形の屋根を6本の柱と柵で支えて建っている。
正午に近い今の時間、屋根の下は薄暗く、薔薇の陰に隠れた呂季の視点からは、中央に設えた石のテーブルの上で揺れる、髪を乱した女の上半身しか見えてはいなかった。

しかし、たったそれだけの光景でも、呂季は自分の鼓動が徐々に速まっていくのを感じていた。

此方に背を向けた女は腰の位置にまで着物をはだけさせ、後ろ向きにテーブルの縁を掴みながらに白い背中を揺らしていた。
そして時おり仰け反るようにしてか細い声を上げ、正面に立つ男の首にしがみつく。
両足は宙に浮いているように見えたが、男が両手で掴み、支えているようだった。

蒸し暑く、甘ったるい薔薇の香りが漂う中で、まるで何かに取り憑かれたように行為に耽る男と女。
間断なく聞こえる音は、湿り気を帯びた息遣いと、濡れた陰部がぶつかり合う密かな水音。

女はたえず揺れていた。
白く細い首には解れた髪が張り付き、汗に濡れた華奢な肩と背中は規則的に与えられる振動によって、小さく跳ね続けている。

男の分身は今、女の熱いぬめりの中に包まれているのだろう。
女の肌をまさぐり、あの柔らかい膨らみを揉みしだきながら、本能の赴くままの抽送を繰り返し、恍惚とした脈動を感じているのかもしれない。

しかしそんな卑猥な想像をしていた為だろうか。
不意に、呂季は自分の股間が熱くなるのを感じた。
どくんどくんと脈打つ中で、全身の血が全てそこに集中してゆくような感覚だ。

それは間違いなく、男としての生理現象だった。

けれど予想外ともいえる現象に動揺する呂季の耳に、突然、息を乱した女の切なげな、甘えるような声が届いた。




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