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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
「お……おにいさま……」
その声が聞こえた途端、呂季の衝動は僅かに緩んだ。
聞き覚えのある声。否、脳裏には既に、自分のよく知る女の顔が浮かんでいた。
貴子だ。
幼い頃からよく知っている。
最近は屋敷内で見掛ける程度ではあったが、1年前までは和寿と一緒にいると、子犬のような無邪気さで駆け寄って来ては、挨拶ぐらいは交わしていた。
『お兄さま』
和寿を呼ぶ時の、甘さを含んだ明るい声。
十代半ばの自分と同い年の少女だ。
ほっそりとした手足に、なだらかな曲線を描いたような細い腰、胸にはまだ大人の女性のようなふくよかさは無いものの、女である事を主張するような小さな膨らみは、呂季にとっては妬ましくもあり、充分に魅力的なものに映っていた。
しかし自分は、貴子にだけでは無く、女性に対して性的な興奮を覚えた事は無かった。
勿論、書物や学友達の話によって知識だけはあるつもりだが、自分の肉体がどちらの性を受け入れるかなど知ろうともしなかった。
否、無意識に避けてもいたのだろう。
呂季は自分が"男"である事を認めてはいたが、肉体的な男らしさは受け入れられずにいた。
体毛や体格の変化は勿論、女に興奮し、勃起するなんて事はあり得ない。
しかし今、呂季は確かに興奮していた。
呼吸は荒く乱れ、息苦しさに堪えながら股間を押さえると、ズボンの中のぺニスは硬く張り出し、痛いほどに膨張していた。
嫌だ……。
まるで自分のものでは無いようだ。自分の手の中にあるそれが、肉体の一部とは思えないほど硬くなり、力や理性では抑えられない異物と化している。支配されているようだった。
本能的には、それをどう宥めるかを知っている。否、この場所から離れればどうにかなる事も分かっている。
しかしそれでも、呂季にはそれが出来なかった。
薄暗闇の中でまぐわう兄妹の卑猥な音を聞きながら、呂季はいつの間にかその場に膝を突き、ズボンの中のそれを解放しようとしていたのだ。