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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
"灯火"って何だろう?
リビングの扉が開き、入浴を終えた智之の足音が聞こえてくると、葵は急いで本を閉じてベッドから降りた。
物語の流れとしては切りの良いタイミング。けれど疑問を残したままの中断は、気分の良いものでも無かった。
"灯火"とは何なのか?
まさか、男としての本能に絶望した呂季だったけれど、半面では自慰行為による快感を覚えてしまい、これはこれで良かったなんて思ってしまったとか?
いやいやいや、それは無いだろう。無いと思いたい。
けど、あと少しで分かるはずだった疑問を先伸ばしにされるのは、今の葵にとってあまり都合の良いものでも無い。
寝室の外から「出たよ」と呼ぶ智之の声に返事をし、葵はタオルと着替え一式を持って寝室を出た。
風呂上がりの智之はいつものようにパンツ一枚の姿でエアコンの前で涼んでいたが、葵が無言で入浴に向かう行動は珍しいものでも無く、特に気にする様子でも無かった。
しかし実際のところ、葵は焦っていた。
表面上は何も変わらないし、表情にもそれは現れていなかったが、急ぎ足でリビングを抜ける葵の身体は、間違い無く"興奮"していたのだ。
原因は分かってる。
あの禁断の場面__描写は至ってシンプルだったけれど、文字を追いながら想像を膨らませ過ぎていた為に、葵の中では微かな後ろめたさと昂りが芽生えていたのだ。
呂季の葛藤を想像しつつも、貴子と和寿が激しく睦み合う光景が頭から離れない。しまいには薔薇と香りに包まれながら欲情する貴子に自己投影しながら、軽い疼きすら感じてしまっていた。
しかも、また、やってしまった……。
呂季が見ていた欲情する貴子。その貴子が感じている快感を身体に甦えらせながら、葵は無意識にも和寿を森川として想像してしまっていたのだ。
なんて、いやらしいんだろう……。
理性では、そんな自分を誤魔化すように呂季の心境を考えようとしているのに、ほんの一瞬の想像のせいで、身体は敏感に反応してしまっていた。
それは脱衣場に入り、最後に脱いだショーツを見れば明らかだ……。
***