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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
「あぁっ!もうっ!くそっ!!」
車に乗り込むと同時に、バッグを助手席に叩き付けていた。
時刻は21時半を過ぎ、スタッフ全員の目標だった"1時間で終わらせる"は約30分オーバーでゲームセット。
どんなトラブルがあったかは明確で、修正に手間取ってしまったのが大きな要因だった。
なんでストックから抜いた商品をそのつど修正しなかったかな?
出したらメモをしておくなり、それくらいの事は出来たでしょう?
取り敢えず昨日終わらせた作業をやり直して事なきを得たが、こんな初歩的なミスをしていた自分が信じられない。
専門学校在学中から結婚するまでずっとアパレルの販売を続けていて、棚卸しなんて何度もやって来たのに、20歳の学生アルバイトだった頃と同じミスをするなんて、悔しさと恥ずかしさで発狂しそう。
しかもそれなのに店長も横内も他のスタッフも優しくて、なんだかそれだけで泣きそうになってしまっていた。
責めてくれて良かったのに、寧ろ『経験者だから採用したのに』とか『帰りが遅くなっちゃったじゃない』と罵られた方がマシだったとも思う。
勿論、みんな大人だから口には出さないだけだと分かっているけど、自分自身がミスの原因を知っているから、厳しい罰を望んでいたのかもしれない。
そう、すべては自分のせいだ。
思い返すのさえ恥ずかしけれど、昨夜は煩悩との戦いだった。
小説の世界で森川と情交し、挙げ句のはてには下着まで濡らしていたし、ベッドに入ってからも身体の疼きは治まる事も無く、何度も寝返りを打ちながら眠りに着けずにいたのだ。
いっそのこと、妄想に浸りながらシてしまいたいとさえ思っていた。
彼のあのTシャツの下の筋肉や肌の質感を思い浮かべ、ブナの幹に触れる指先の動きを想像しながら、硬く敏感になっている乳首を弄りたい。
ぬるぬるとした秘部を撫で回し、自分を見つめる茶色く野性的な目や、薄く形の良い唇に弄ばれる感触を思い浮かべながら、オーガズムに達したい。
けれど先日の出来事を思い返せば、それが如何に危険な事がが分かるし、そもそも森川を性の対象として見たくは無かった。
その結果、翌日の仕事に影響を及ぼすまでの寝不足となっていたけれど……。