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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
温めた野菜スープを皿に移し、シンクに寄り掛かりながら食事を始めた。
本当は昨夜残しておいたトウモロコシご飯も食べたいくらいだったけれど、こんな遅い時間に炭水化物を食べる勇気も無い。
とにかく今日は早く寝よう。
眠ってしまえば失敗も自己嫌悪も忘れられるし、智之と関わってイライラしないで済むはずだから。
しかし"明日"に対する楽しみが持てない為か、気持ちは沈んだままだった。
洗い物を終わらせて寝室に向かう途中で、リビングでテレビを観ていた智之と目が合った。
智之は何も言わず、すぐに目を逸らしたが、おそらく葵の機嫌が気になっているのだろう。
『なに?』と尋ねればそれなりの反応はあるが、不機嫌の理由が分かっているのだから、『怒ってる?』なんてわざわざ聞くまでも無い。
それでも、何も言わずに見られる事自体がたまらなく不快。
言いたい事があるなら、はっきり言えばいい。
何かを言って貰うのを待っているような、他人の顔色を伺うような態度そのものが嫌い。
しかし智之にも思う事はあったのだろうか。
智之を無視して寝室に入り、彼が片付け忘れていた洗濯物を畳み終えた葵が入浴の準備をして出て来た時、智之は再び葵を見てこう尋ねた。
「葵、もうすぐ生理?」
「……は?」
「だって凄いイライラしてるじゃん?」
その不躾な発言に、葵は無意識に智之を睨んでいた。
勿論、智之の発言の意図は瞬時に察していたからだが、苛立ちは既に沸点にまで達しようとしている。
ここで無視するかキレるか。
葵は何処からどう見ても"わざとらしさ"しか感じない智之の心配そうな顔を見て考えた。
キレたらきっと後悔する。
だけど無視しても後悔はするだろう。
だったら……。
「女がイライラしてる原因は、全部、生理のせいだと思ってるの?
え、もしかして会社でもそんな風に言ってるの?大丈夫?やめてね。
あのね、生理に対して理解して欲しいとは思ってるけど、分かった気になられても迷惑なの。
それにね、原因が無ければイライラなんてしないし、あなたがするべき事をすれば、私の機嫌なんて気にする必要なんて無いんじゃないの?」
一先ず相手に発言権を与えず、ヒートアップする前に立ち去るべし。