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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
「さっきね幸代とも話してだんだけど、葵ちゃんは婦人科で検査を受けた方が良いと思うのよ。ほら、子供の事だってあるでしょう?」
「……あぁ……」
しかし多代の質問に対し、瞬時に理解を示そうとは思わなかった。
多代は自分の話を中断されたり変更される事を嫌い、優位な立場で延々と話して満足するタイプであるから、鈍感なふりをして切り抜ける方が無難だ。
「年も年なんだし、あちらのご両親だって孫の顔を見たいと思うのよ」
「……はい……そうですね」
「私達だって、いつまで生きてられるか分からないしね。それにね、一番心配してるのは幸代なのよ?あの人はね、普段は何も言わないけど、葵ちゃんの事をすごく心配してるんだから」
「……」
「それで幸代が言ってたんだけど、病院てね、ひとつじゃ無くて、いくつか回って診てもらった方が良いんだって。ひとつだと見落としがある場合もあるでしょう?何か原因があるかもしれないから、葵ちゃんもそうしてみなさい」
「……そうですね」
だけど、どうしてこんな時にこのタイミングで?
威圧的に自分を見上げる多代の忠告に頷きながら、腸が煮えくり返っていたのは言うまでもない。
何が幸代だ?何が心配だ?
ろくに話した事も無い人間の人間性なんて、知った事じゃ無いし、何も知らないくせに想像で決めつけるな、口出しすんな。
私が知ってるのは毎週実家で昼食食べて、窓の外を横切っていく只の中年太りの女だ。
あとは盆と正月に集まって食事をする時の腰の重さとだらしなさ。そして傲慢さ。
お年玉を貰った我が子に"ありがとう"の一言すら教えられない非常識さか。
学歴は少なくとも私より良いかもしれないが、挨拶すら知らない奴が知ったような口を利くなと思う。
それにセカンドオピニオンならわざわざ言われなくても分かっているし、智之にもそう言った。
けれど少なくとも『病院には行きましたし、私にはどこにも問題はありません』と言ったところで、多代は聞く耳を持たず、不機嫌な表情を見せて自分の主張を押し付けるのだろう。
言うべき事だという事は分かっているのに、姑の反応を気にしてしまう自分にも腹が立った。